「5回裏の守備で、オリックスにミスが出ました。その後、逆転に成功しましたが、救援投手が踏ん張れず…」(プロ野球解説者)
日本シリーズ第3戦は、サンタナの決勝2ランでヤクルトが勝利した。
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しかし、ヤクルトサイドではこんな言葉も囁かれていた。「オリックスはコワイ」と。それは、6回表に出た4番・杉本裕太郎のホームランを指していた。
杉本のライトスタンドに放り込んだ2ランで、いったんは同点に追いついた。その前の5回裏の守備で凡ミスを連発し、ヤクルトに逆転されている。「そんなミスを取り戻す破壊力がオリックス打線にはある」という意味だが、これだけでは説明不足だ。
「少し詰まっていましたし、まさか入るとは」
これは、杉本のホームラン談話だ。
杉本は中嶋聡監督に見出されたスラッガーだ。
今季、32本で本塁打王のタイトルを獲得した。昨季までの通算年塁打数は9、ルーキーイヤーの2016年から「打球飛距離だけならメジャー級」と言われていたが、“一軍と二軍を行ったり来たり”だった。
「2ランが出た打席は最初から『右方向』を狙っていました。前打者の吉田正尚が出塁し、無死二塁の場面でした。杉本はたとえ自分がアウトになっても、右方向に打って走者を進め、最低でも一死三塁、犠牲フライで1点という場面を作ろうとしていました」(ヤクルト関係者)
本塁打王のタイトルはバットを振り回し、パワーで獲得したものではない。「考えて打つこと」もでき、それをスタンドまで運ぶ破壊力がある。だから、オリックス打線がコワイというわけだ。
「杉本の一軍定着のための課題は、右方向へのバッティングでした。昨季後半からようやく試合でもできるようになって」(前出・プロ野球解説者)
本人の地道な努力がようやく実ったのだろう。
試合後、中嶋監督は眉間にシワを寄せたまま移動バスに乗り込むなど、敗戦の悔しさを露わにしていた。
オリックスの1勝2敗。負けても、ヤクルトの警戒心を強めたのだから、この先の巻き返しはさほど難しいことではない。いや、ミスによる失点も取り返す自分たちの野球ができていたからこそ、勝ちたかったのだろう。東京ドームはホームランの出やすい球場とも言われている。杉本の大飛球を見せられたせいか、第4、5戦もホームランで試合が決まりそうな予感がする。(スポーツライター・飯山満)