1948年、マレーシアとインドネシアのスマトラ島の間にあるマラッカ海峡(約930キロ)を航行していたアメリカの船シルバースター号は、奇妙な緊急無線を受け取った。それはジャカルタへ向けて航行中だったオランダの商船オーラン・メダン号からのもので、無線技士のラビットという人物からのものだった。
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内容は「私以外の船員が何かに襲われている。急に口から血を吐きながら倒れてしまった。既に絶命した者もいるが、私を含め何人かはまだ生きている。どうか助けてほしい」というせっぱ詰まったものだった。その後、意味不明のモールス信号を発した後「I die .」とだけ残して無線は切れた。
シルバースター号は無線中継基地などの援助を得て、三角測量を用いてオーラン・メダン号の位置を特定して遭難したとみられる海域に向かった。無線から約3時間後、オーラン・メダン号は発見されたのだが、呼びかけても応答がない。そこでシルバースター号の船員たちがオーラン・メダン号の甲板に上がってみたところ、そこには驚くべき惨状が広がっていた。炎天下で急速に腐敗していく数々の遺体と、その肉をついばむカモメたち。当時のある記録によると、横たわった乗組員の死体は「太陽を見上げ、歯をむき出しにして、恐怖でこわばった顔をしていた」という。
船に乗っていた犬も同じような姿勢で死んでおり、発見時は「半ばうなっていた」そうだ。不気味なことに、船は海賊や嵐などに襲われた形跡もなく、乗員たちの体にも目立った傷はなかったという。
オーラン・メダン号は航行可能なのか、さらなる調査をしようと船員らが船室に入ろうとしたその時、機関室から発火。船員たちが避難した後、オーラン・メダン号は爆発し跡形もなく沈んでしまったという。
果たして、オーラン・メダン号の乗組員たちはなぜ死んでしまったのか。彼らの身に何が起きたのか。何らかの原因で船内に毒ガスが発生し、中毒に陥ったのではないかという説からUFOやエイリアンに襲われたという説まで様々な説が出ているが、なにせ50年以上前の事件である上に、船体が爆発し遺体も残されていないため、真実は分からないままとなっている。
一方で、オーラン・メダン号の話がそもそも創作だったのではないか、という話が出てきている。そもそもオーラン・メダン号という船の記録がどこにも残っておらず、救助に向かったというシルバースター号の記録にも出てこなかったからだ。また船舶保険で有名なロイズ保険組合の記録にも存在していなかったという。
また、ドイツの研究者テオドール・シアドラーファー教授がこの話を調査したところ、1953年に出版された『南海の死の船』という古い出版物で、同じような状況で船が失われるという記述が存在していたことを発見した。その本によると、船には青酸カリとニトログリセリンが積まれており、これらが爆発の原因になった可能性があるという。毒ガスが発生して乗組員と犬が死んだ可能性もある。
この船が遭難して発見された正確な時期は確認されていないが、もし1940年代前半の出来事であったならば、第2次世界大戦が始まった時期と重なる。つまり「オーラン・メダン号事件」は実際にあった別の爆発事故の記録ないしは創作から生み出された都市伝説だった、という可能性も考えられるのだ。
山口敏太郎
作家、ライター。著書に「日本怪忌行」「モンスター・幻獣大百科」、テレビ出演「怪談グランプリ」「ビートたけしの超常現象Xファイル」「緊急検証シリーズ」など。
YouTubeにてオカルト番組「アトラスラジオ」放送中
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