2017年、アメリカの空母ニミッツがUFOらしき物体を捉えた映像が世界に流出、米海軍はこの物体を「UAP(未確認空中現象)」と公式に認定した。そして現在、海軍がタスクフォースに従ってUFOの研究を主導しているのだが、アメリカ国防総省は海軍よりも宇宙軍の方がUFOの情報収集を目的としたより強力な取り組みを監督するのに適しており、また若者の間で世間を魅了しているテーマと関連付けることで、採用を促進できると考えているようだ。
>>ハーバード大学主導で宇宙に存在するエイリアンの技術を探索するプロジェクトが始動<<
この計画について、元情報機関職員は宇宙軍が他の軍に比べて地理面で広い範囲を担当していることや、米宇宙司令部を通じて全世界、さらには銀河系の監視技術を利用できることなどを理由に「完璧に理にかなっている」と述べている。
実際、国防総省と国家情報長官の両方に報告する、極秘の「宇宙安全保障・防衛プログラム」が既に検討されている。このプログラムは潜在的な宇宙の脅威を評価する幅広い権限を持ち、新しい収集能力を開発するための契約を結ぶ権限も持つ。他にも、外国の兵器システムを研究し、UFOの目撃情報を調査してきた国防情報局や、国の空域を守る責任を負うコロラド州の北米航空宇宙防衛司令部などがUFO問題の監督に大きな役割を果たす候補となっている。
一方で、元政府関係者や宇宙軍に在籍する人々からは「UFOに関する任務の引き継ぎ」について慎重な声が上がっているという。そもそも設立が発表されてから、宇宙軍は様々なSF作品などをもとにしたジョークの対象となってきた。さらにUFOに関する任務が加われば、そのジョークに正当さを足してしまうのではないかというのだ。
今年6月に国家情報長官が議会に提出した報告書では、144件のUFO目撃情報のうち1件を除いて全て説明がつかないものであると結論され、その中には高度な特性を持つと思われる18件も含まれていた。この件について、報告書では「我々は現在、事件を説明できるだけの十分な情報を持っていない」と記載されている。また、未確認飛行物体についても「明らかに飛行安全上の問題があり、米国の国家安全保障上の課題となる可能性がある」と結論づけられている。
UFOは立派な国家安全保障の問題なのだが、一般に広まってしまったイメージからの脱却は難しいようだ。ペンタゴンの元情報機関幹部で、議会スタッフとして軍に助言してきたクリス・メロン氏は、より恒久的な取り組みを主導することになった場合、政府内の数多くの軍、情報機関、法執行機関に加えて、学術界、科学界、一般市民と緊密に協力する姿勢が必要だと述べている。
(山口敏太郎)
参考記事
'They want people to take them seriously': Space Force wary of taking over UFO mission(politico)より
https://www.politico.com/news/2021/08/09/space-force-ufo-military-mission-502843