新約聖書の創世記8章4節によると、ノアの方舟はトルコのアララト山に漂着したとされている。これは単なる伝説にすぎないと言われてきたが、過去には実際にアララト山からノアの方舟の残骸らしき木片などが発見されており、いまだに実在説があがって研究も行われている。
さて、そんな「ノアの方舟」が実在したとしたら、どんなスケールになったのだろうか。実際にレプリカを作成した人物がオランダにいる。
オランダの建築業者のヨハン・ヒュベールス氏は、私財を投入し4年かけて聖書の記述に沿った原寸大レプリカを建造したのだ。出来上がった箱舟は長さ119メートル、幅30メートル、高さ23メートル。かかった費用は400万ユーロ。木の量は12000本に相当する。なお、聖書では方舟は未知の木材であるゴファーウッドで造らなければならないとされていたが、再現にあたってアメリカスギとマツを利用したとのこと。
現在、この方舟は2隻存在しており、最初に建造されたものがオランダのドルドレヒトに、後に半分の大きさで建造されたものがイギリスのイプスウィッチの港に1隻、それぞれ係留されている。いずれもラッシュ船(艀=はしけ=を搭載して輸送するための船)からなる浮き台の上に設置されており、最初に造られた方は海に係留した博物館のような施設になっている。船内には聖書にまつわる様々な資料が展示されており、来場者は自由に閲覧できるという。
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原寸大の方舟は2010年にオランダのテレビ演劇プロデューサーであるアド・ピータース氏が300万ユーロで購入。当初彼はこの船を様々なバックグラウンドを持つ人々の「語り場」にすることを目的としたいと述べていた。
その後、2019年にピータース氏はブレグジットの国民投票に感銘を受け、オランダからイギリスのイプスウィッチまで方舟を移動させたのだ。だが、イプスウィッチに到着した直後、方舟は満載喫水線証書が見つからない、トン数の情報がないなど、様々な懸念から基準を満たしていないと判断され、沿岸警備隊員によってドックに係留されたままとなってしまった。
それから2年近くが経った現在も、「ノアの方舟」は船の状態と耐航性に深刻な懸念がある状態のため、以前港に留置された状態が続いている。なお、この再現版「ノアの方舟」は大小どちらも浮き台に乗った状態でタグボートなどにけん引してもらわない限り動くことはできず、単独で海を渡ることは非常に難しいものであることが判明している。
聖書の記述に限りなく近い形で再現を試みた「ノアの方舟」だが、実際に嵐の海原を航行できたかという点については疑問符がつきそうだ。
(山口敏太郎)
参考記事
Huge Noah's Ark replica deemed 'unseaworthy'(unexplained-mysteries.com)より
https://www.unexplained-mysteries.com/news/347488/huge-noahs-ark-replica-deemed-unseaworthy