>>元近鉄・金村氏「ヤクルトロッテの日本シリーズ寂しい」発言に怒りの声 首位球団への“難癖”が物議、興行的には旨味アリと指摘も<<
「(ドラフト会議の)直前で(1位入札選手名を)発表できるかもしれない」
これは、先日10日、球団スタッフの一人が待ち構えていた取材陣にこぼしたセリフ。その表情は、まさに疲労困憊といったところだった。
プロ野球のスカウト陣がドラフト直前になって慌てるなんてことは、初めてではないだろうか。
理由は、いくつかある。まず、コロナ禍で中止に追い込まれた大会もあり、視察機会が激減したこと。また、感染防止の観点から練習時間を大幅に減らした学校も少なくなかった。
「東京五輪の影響で変則日程となり、ドラフト会議も例年よりも2週間近くも前倒しとなりました。視察機会が減った上に時間まで削られて…」(在京球団スタッフ)
しかし、ヤクルト球団が最終チェックに苦しんだ理由は、それだけではなかった。
「現場から左投手の指名を強く言われています」(関係者)
目下、一軍で先発登板しているのは、石川雅規と高橋奎二。石川は41歳だ。シーズン途中から田口麗斗がリリーフにコンバートされたのもブルペン陣に左投手がいないからだ。
「昨年のドラフト会議で早稲田大学の早川隆久(現楽天)を入札し、抽選で外れました。2回目の入札でも法大の左腕・鈴木昭汰(現ロッテ)の獲得を狙いましたが、失敗しています。そのツケも大きい」(前出・同)
優勝カウントダウンは始まったが、左投手の補強は急務である。高津臣吾監督は苦しい継投策を強いられてきた。
即戦力と称される好左腕は何人かいる。西日本工大・隅田知一郎、筑波大・佐藤隼輔、三菱重工West・森翔平らがそうだが、前出のチーム関係者がこんなホンネもこぼしていた。
「隅田、佐藤、森、みんな良いピッチャーですよ。でもね、急に良くなったんですよ。彼らの努力によるものだと思いますが、急成長したピッチャーってのは『勢い』だけで投げているところもあるので、実力がホンモノかどうか分からないんです。今年は見極める時間、機会が少なかったし」
今年は“急成長タイプ”が多いそうだ。
一般論として、プロ野球全球団のスカウトは大学生の指名候補なら高校時代のデータを、高校球児なら中学時代の調査書も持っている。極端なことを言えば、10代前半で見つけた逸材がどの学校に進み、どんな風に成長していくかを見守るのがスカウトの仕事である。急成長した選手については10代前半を見ていないので、データが少ない。
ヤクルトのスカウト陣が映像の“直前チェック”をしなければならなかった理由は、この辺にある。
「隅田クンに指名が集中しそうですね。指名重複による抽選は必至」(スポーツ紙記者)
ドラフト直前情報として、そんな声も多く聞かれた。
2年連続で1位入札の抽選クジを外したら…。高津監督は優勝しても心底から喜べないだろう。(スポーツライター・飯山満)