「矢野監督は交流戦以降、勝ち星の計算をしていました。『あと何勝すれば、首位で前半戦を終えられるか』という…。前半戦最後の巨人3連戦は絶対に勝ち越したいと思っていました」
関西圏で活動しているプロ野球解説者がそう言う。
2位巨人とのゲーム差が縮まったため、「追いかけられる側の緊張感」も増してきたのだろう。西を先発マウンドに送った3連戦最後の試合は「1安打、0対1」で敗れた。もし勝利していたら、その時点で“首位ターン”は確定した。前半戦首位が確定すれば、球宴・五輪の中断期間を安心して調整に充てられる。そう思ったそうだ。
「巨人にひっくり返されて中断期間に入れば、チームは重苦しい雰囲気のまま、過ごすことになります」(前出・プロ野球解説者)
前半戦終了まで、阪神はDeNAと3試合。巨人はヤクルトとの2試合を残している。阪神がDeNAとの3連戦を2勝1敗で勝ち越せば、勝率6割5厘。巨人はヤクルトに連勝しても届かない。巨人の連勝が条件となるが、DeNAから2勝できなかった場合は、首位陥落となる。
首位ターンの勝率の計算を内々にしていた矢野監督は「ヤクルトよ、代わりに巨人を叩いてくれ」の心境だろう。
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「矢野監督の采配が裏目に出ています」(前出・同)
第2戦、第3戦の試合後、そんな声も多く聞かれた。
「第2戦の敗因は打順を変えたこと。不振で(前節のヤクルト戦まで)7番に下げていた大山悠輔を4番に戻しました。その大山が4番の務めを果たせなかったのも敗因の一つ」(ベテラン記者)
打順を下げられ、大山は復調の兆しも見せていた。同試合後、矢野監督は「あの打順(4番大山)が一番良い」と記者団の質問に答えていたが、要は立ち直るきっかけを与えたものの、その温情が裏目に出てしまったわけだ。
そして、エース西で落とした第3戦。8回裏の攻撃で、矢野監督は8番・中野拓夢に代打を送らなかった。その時、巨人のピッチャーは左腕・大江。「二死走者ナシ」だったが、9回裏の攻撃があるとしたら、上位打線に回る。代打陣を起用する場面は、佐藤輝明、梅野隆太郎が打ち取られた後の「8番・中野」の場面しかなかったのだ。
「結果、阪神は『1安打完封負け』。3回裏に出たヒット1本だけ。その1本を打ったのが中野でした。それで、代打起用をためらったようです」(前出・同)
結果論だが、巨人3連戦に負け越したのは、矢野采配が裏目に出てしまったからとも言える。阪神の首位ターンが決まれば、13年ぶりだ。球宴・五輪の中断期間は、矢野監督もリフレッシュできればいいのだが…。(スポーツライター・飯山満)