ワクチンの接種が比較的進んでいるといわれていたヨーロッパの中でも、ドイツはほかのヨーロッパ諸国に比べ、少々ワクチン接種の開始が出遅れていた。しかし今では急速に接種が進み、9日現在、ワクチン接種が2回完了した人は約40パーセント(1回目のみは約60パーセント)でほかのヨーロッパ他国と同等かそれ以上の率である。なお、日本は約15パーセント(1回目のみは約27パーセント)でドイツの半分にも満たない数字だ。
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しかし実際はドイツもワクチン接種に関する問題を抱えているようだ。ドイツはワクチン接種のスピードが日本よりも早いことは確かであるが、日本と同様に、ワクチンの予約をキャンセルせずに当日会場に来ない人が多いことが問題視されている。国全体の無断キャンセル率は出ていないものの、ドイツのニュースサイト『RND』の7月6日の記事によると、首都ベルリンでの無断キャンセル率は5〜10パーセントで、この割合は最大でワクチン7万回分に及ぶという。ドイツでは「Impf(予防接種)」と「Schwänzer(サボる)」という単語を組み合わせ、ワクチンをサボる人を意味する「Impfschwänzer」という造語まで出る始末。社会問題と化しており、政府は今後、ワクチン接種の無断キャンセル者に25〜30ユーロ(3200〜3900円)の罰金を科すことを検討している。なお、同記事によると、無断キャンセル分のワクチンは基本的に廃棄せず、別の人に回すそうだ。
また現地では最近、1回目のワクチン接種はするものの、2回目のワクチン接種を怠る人が多いことを問題視する報道もある。1回で効果は十分と勝手に考える人が多いほか、バカンスシーズンに入り2回目の接種のスケジュールが合わず打たないままの人が多いようだ。現地のドイツ人は「ドイツ人にとってバカンスは大切。ワクチンの接種とバカンスだったらバカンスが優先される気持ちは分かる」と話した。医師などは2回の接種が重要であることをメディアを通じて訴えている。
一方で、ワクチンを接種したいにもかかわらず、打てないという声も少なくはない。現在ベルリンやミュンヘンなどの都市部ではワクチンの予約が困難だという。ある30代のドイツ人は、ワクチン接種が可能になった6月から予約を取るため、毎日のようにクリニックに電話をしているが、「取り合ってもらえない状況」だという。予約の電話が多いからか、ホームページに「すでに当院にワクチンはないので、ワクチンに関する電話は掛けないでください」と大きく表示しているクリニックも多い。
しかしホームページにワクチンがないと大きく書かれているものの、電話をしてみるとあっさり予約が取れたという人もいる。別のドイツ人は「ワクチン接種は運のような面もあり、平等でないと感じる」と話した。
なお、マスクに関しては、公共の場など法律で決められた場所ではワクチン接種の有無にかかわらず、きちんと守って着用している人がほとんどだ。これはワクチンを接種しても感染対策を怠らないようにしている人が多いというより、決まりはきちんと守るドイツ人の性格が表れているといえよう。
海外のワクチン接種は日本よりも“進んでいる”と考える日本人は少なくはないようだが、深刻な問題も生じているようだ。
記事内の引用について
「大規模接種センター 4081人が予約キャンセルなしで来場せず」(NHK NEWS WEB)より
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210608/k10013073891000.html
「Impfmüdes Deutschland: Warum Schwänzer zum Problem warden」(RND)より
https://www.rnd.de/politik/wie-die-impfkampagne-schwung-bekommt-und-wie-nicht-VLKXUYR2OFD2BNIUME65USXG6Y.html