現在のドイツのワクチン接種状況は、1回目の接種が完了した人が約40パーセント、2回目の接種が完了した人が約11パーセントで、現状、医療従事者や60歳以上の高齢者への接種はほぼ完了しているようだ。それ以外の人は6月7日から接種が可能になると政府は発表している。日本ではワクチン接種に関する対応の遅れに批判が集まっているが、ドイツも周辺他国と比べれば決して早い対応とは言えないものの、批判はそれほど多くはない。その理由はメルケル首相の“有言実行”にあるようだ。
メルケル首相は5月の時点で「6月の初めには全成人がワクチン接種を受けられるようになる」と発言した。実際、多くの地域で5月末から全成人がワクチン接種の予約をオンラインや行きつけの病院で取ることが可能になった。現地のドイツ人は「もちろん批判がないわけではないですが、メルケル首相はワクチン接種の優先順位を早々と分かりやすく伝え、それを実行してきた。そういった背景もあって政府の発言を信じている人が多いのでしょう」と話す。なお、メルケル首相は夏頃までには全ての人にワクチンが提供できると何度か強調しており、その発言を多くの国民が信用しているようだ。
そんなドイツでは地域差はあるものの、多くの地域で新型コロナウイルスによる規制が解除されつつある。数カ月間、テイクアウトのみで閉まっていたレストランはようやく開店し、屋外の席に座って食事やお茶を楽しむ人の姿が見受けられる。だが、レストランで食事などをしているのは多くの場合高齢者なのだ。前出のドイツ人は、地域によって違いはあるとした上で「レストランの規制が解除された当日から人々は外で食事をするようになったが、ほとんどのレストランで食事をしていたのは高齢者だった。若者はまだコロナを恐れる人が少なくなく、レストランなど飛沫が気になる場での食事に抵抗があるのだと思う」と述べていた。
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またレストラン以外でも高齢者の気の緩みを懸念する声は多い。コロナが流行する前は知らない人同士でも道ですれ違うと声をかけ合ったり短い会話を交わすことがあったが、流行してからそういった光景はほぼなくなった。しかしここ数週間で、高齢者へのワクチン接種が完了したからか、特に高齢者から話しかけられる機会が多いという。とある在独日本人は「70代くらいの女性が距離を空けずに世間話をしてきて驚いた。ワクチン接種が進む前は高齢者側から距離を取るように言われたこともあったのに」と話し、高齢者に安心感が生まれていると推測する。なお、ドイツでは公共交通機関やスーパーの中など決められた場所ではマスクの着用が定められているが、それ以外の場所では義務ではないため、外にいるときはマスクをしていない人が多い。前出の女性は「ドイツ人は外でマスクはほとんどしていないけど、マスクをせずに近い距離で話しかけられたのも気になった」と明かす。
また別の在独日本人は1歳の子どもを連れて散歩中に70代と思われる高齢女性に話しかけられ、子どもの手を握られたと話す。高齢者はワクチンを接種していると思われるため必要以上に心配はしなかったが、若者はまだ距離を取って話すことが多いため「ギャップに驚く」そうだ。
ドイツはワクチン接種にあたり、日本ほど混乱はないようだ。一部高齢者の気の緩みを心配する声もあるが、そういった声は今後、全成人のワクチン接種が可能になっていくことで解消されることだろう。