ただ、「寿司の国」発言に関しては、日本では「なんとも思わない」という声がある一方で、ドイツでは差別だと捉える人もいた。というのも、ドイツではキャベツを表す「クラウツ(キャベツの複数形)」を差別用語だと考える人が一定数いるからだ。ドイツ人は「ザワークラウト(キャベツの酢漬け)」などキャベツ食品をよく食べるが、クラウトは第一次世界大戦中、イギリス人がドイツ人を差別する意味でそう呼んでいたという。こういった背景があり、とあるドイツ人は「人を食べ物に例えるのは差別的だということを知っているドイツ人は多いはずだ。寿司の国も間違いなく差別だ」と話す。
しかしながら、ドイツでアジア人差別があるかといえば、必ずしもそうではないようだ。在独日本人は「私の周りの日本人の多くは『ドイツでアジア人を差別する人はいない』と話す人がほとんどです」という。とはいえゼロではなく、差別を経験した人はいる。
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30代の日本人女性は、レジでお金を出すのに戸惑っていたところ、レジ係の中年女性に「だからアジア人は嫌い、アジア人は鈍臭いから嫌われてるって分からないの?」と言われたという。日本人女性は「涙が出るほどショックだった」と話し、それを聞いていた周りの人が中年女性に注意しなかったことも「差別だと思った」と振り返る。
別の30代の日本人女性はコロナ禍以前、レストランで順番待ちをしている時にアジア人という理由で、店員が自分たちより後ろに並んでいたドイツ人を先に通したという。先に並んでいると店員に主張したが「アジア人よりドイツ人が優先」と言われたそうだ。日本人女性によると、こういったケースはまれだというが、主張したことでさらに店員の気を悪くさせたのか、かなり狭い席に通され屈辱的で不快な思いを味わったそう。
また相手に悪気はないものの、差別を感じたという人もいる。20代の日本人男性は、「20代のドイツ人の友人が韓国人を表現するときに、指で目をつり上げるポーズをした」と明かす。ただ、ドイツ人の友人に悪気はなく、アジア人の特徴を示して分かりやすく自分に伝えたかっただけではないかと分析する。日本人男性によると、「日本人が外国人をほめる意味で『鼻が高い』と言うのと同じ感覚」ではないかといい、だからこそ「日本人が外国人の外見の特徴をほめる意味で言うことも差別につながりかねないから注意すべき。小顔と言われて傷つく外国人もいる」と話す。
「BTS」のことを「くだらないウイルスだ」と表現したラジオパーソナリティは謝罪声明を発表し、「寿司の国」発言をした解説者は番組を降板した。日本人が思っている以上に彼らの発言は現地では深刻な差別だと捉えられているようだ。