被害者遺族の知られざる苦悩、現在は法律関係の職に就いている加害者本人の現在などが克明に描かれ、大きな話題となった。
『心にナイフをしのばせて』で扱われた少年犯罪は、1969年に発生した「高校生首切り殺人事件」と呼ばれる事件だ。
1969年4月23日、神奈川県のツツジ畑でひとりの高校生A君がナイフで刺され殺された。目撃者はA君の友人のBで、20歳くらいの男の集団が刃物を持って襲い掛かりA君を刺し、「自分も殺される」と直感したBは急いで逃げ出したが、自分もナイフで肩を切られてしまったという。
発見されたA君の遺体は体を刺された後、首を切断されツツジ畑の草むらに転がっており、見るも無残な状態だった。
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Bは突然友人が殺されたため気が動転していたが、次第に落ち着きを取り戻しA君が殺された状況を話していた。だが、次第にBの供述に食い違いがあることが分かった。
警察は「これまでの君の話はおかしい点ばかりだ。良心的に本当のことを話してくれないか」と問いただすと、Bは「10分くらい考えさせてくれ」と答えると大粒の涙を浮かべ自身の犯行であることを認めた。
A君とBは仲が良い友人同士であったが、A君はBに悪ふざけすることがあり、恨んでいた。
そして2人で遊んでいる時、悪ふざけされたことを思い出し、持っていたナイフで刺し殺してしまったという。A君の首を切断した理由について「生き返ると困るから」と供述していたが、何故そこまでしてしまったかは分からないという。
Bは少年院を出所した後、名前を変え自立した生活を送っていたが、その陰で被害者遺族は家庭崩壊寸前になっていたことが『心にナイフをしのばせて』で公表されることになり、本事件は再び注目されることになった。