現役の総理大臣が殺害されたのは五・一五事件の犬養毅以降ないが、未遂を含めると歴代総理は膨大な数の危機に直面している。今回、紹介するのは戦後に発生した、ある知られざる少年犯罪の話である。
1959(昭和34)年4月、秋葉原駅の近くの交番に勤務する巡査がナイフで首を刺され死亡した。犯人は18歳の少年。巡査に道を尋ねるふりをして、持っていたナイフで巡査に襲いかかり殺したという。
この少年は岐阜県に生まれ、中学卒業後に名古屋のある工場で働いていたが犯行の3日前、勤めていた工場から1万数千円を盗み出し、東京にやってきたばかりだったという。
少年が巡査を殺害した動機は当初分からなかったが、次第に口を開いたところ、恐ろしい暗殺計画を企てていたことが分かった。
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名古屋の工場で少年はわずかな給料しかもらえず、苦しまぎれに東京にやってきた。そして次第に「(当時の首相)岸信介がいなくなれば自分のような労働者は助かる」と考えるようになり、岸暗殺を実行しようと考えた。
少年は1本のナイフを懐に忍ばせて首相官邸に出かけた。しかし、官邸は守衛が多くナイフだけで突破するのは不可能。そこで少年は「暗殺するには銃が必要だ」と思いつき、ナイフを使って警官を殺し、拳銃を盗もうとしたのだ。つまり巡査殺しは岸信介暗殺計画の第一歩だったというわけだ。
当然、成功するわけはなく、第一歩である警官殺しまでで計画は頓挫したのだが、この事件はどこにでもいる少年が「首相殺し」を計画した事件として世間に衝撃を与えた。
少年はその後、「やけになっていた」と反省の言葉を述べ、極刑は免れたものの無期懲役となったという。