第一発見者は付近でアサリを採取していた地元住人。腹部から脚部までしかない切断死体が海に浮いていたそうだ。DNA鑑定の結果、遺体は福岡県在住の当時32歳の女性Aさんのものと判明した。その後、4月9日には福岡市の福岡競艇場で両腕、4月14日に博多港近くで胴体、4月15日には博多湾で頭部が見つかった。頭蓋骨には数カ所ひびが入っていた。
Aさんは博多駅近くのアパートで一人暮らしをしており、そこから筑紫野市にある医薬品卸会社に通っていた。勤務態度は真面目で、同僚らからも慕われていたという。しかし、プライベートではいくつか悩みを抱えていたことが判明している。事件の1年前、2009年1月にAさんは福岡市で自動車を運転中に接触事故を起こし、衝突した相手の男性と過失の割合をめぐりトラブルになっていたのだ。男性から電話が頻繁にかかってきたり、自宅付近をうろつかれたりしていたそうだ。友人に怯えた様子で相談しており、女性のmixiアカウントページにも男性とのトラブルに悩んでいる様子が書き込まれていた。
この男性はAさんの遺体が発見されてから4年後、2014年2月に有印私文書偽造・同行使の罪で福岡県警に逮捕されている。容疑はAさんとの間に起こった交通事故の示談書を偽造していたというもの。Aさんの事件にも関係があるものと警察は考えたが、有力な証拠は見つからず。Aさんの殺人事件においては証拠不十分で逮捕には至らなかった。
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では一体誰がAさんを殺したのか。実はAさん、遺体となって発見される1カ月前から行方が分からなくなっていた。3月5日の夕方、会社を退勤して以降、連絡が取れなくなっていたのだ。心配した同僚が警察に通報し、地元警察がAさん宅を捜索したものの、Aさんの姿は既になかったという。玄関は施錠されていたが窓ガラスが内側から割られており、私用の携帯電話がなくなっていた。
警察が周辺の住人に聞き込み捜査を行ったところ、3月3日頃からAさんらしき人物が男性と言い争っている姿が確認されていた。男性が「恐れるものがないくらい好きだ」「お前を殺すこともできる」と発言していたという。また、3月6日の深夜2時頃には、Aさんらしき女性が、足元がおぼつかないまま男性に車に乗せられていたことも判明。さらに、Aさんが消息を絶った後も、Aさんのmixiアカウントに何者かがログインした形跡があった。
警察はAさんの交友関係を一から洗い出し、容疑者の絞り込みを行った。捜査線上にはAさんが担当していた病院関係者の名前も複数挙がったというが、事件につながる証拠は見つからなかった。遺体をバラバラに切断するという常軌を逸した犯行はAさんへの私怨によるものだろうか。現在判明しているトラブル先から事件に関するものは何も見つかっていないが、それならば事件の発端はどこに隠れているのか。