「正捕手の梅野隆太郎がヤクルト戦(4月18日)で右手親指を故障してしまいました。この3連戦は正捕手不在で戦うことになりそう」(プロ野球解説者)
故障した時だが、気になる点もいくつか見られた。スコアは8対1、7回表、無死一塁の場面で2番手・石井大の投じた一球がワンバウンドし、梅野の右手親指の付け根付近にぶつかった。梅野はそのまま自軍ベンチの方へ右手を見て、自ら退いて行く。後続ピッチャー陣が打ち込まれ、終わってみれば、10対7の僅差になっていた。
梅野は開幕から全試合にスタメンマスクをかぶってきた。“出たがり”の正捕手が自ら交代を申し出たのはよほどのことであり、大勝ムードが一変したのも衝撃的だった。
「昨季は東京ドームで3勝9敗と大苦戦でした。チームは7連勝、2位巨人とは3ゲーム差と優位に立っていますが」(在阪記者)
前出のプロ野球解説者が「一軍登録されている阪神の3人の捕手」を指して、こう言う。
「梅野、坂本誠志郎、原口文仁が登録されていますが、原口は代打要員、捕手として、守備面で待機しているのは坂本だけ。坂本が代わってスタメン捕手を務めるとなれば、二軍から誰か一人昇格させておかないと…」
二軍捕手で最も試合出場数が多いのは、5年目の長坂拳弥。矢野燿大監督が期待する新人・榮枝裕貴の抜てきも考えられる。巨人3連戦での先発が予定されているのは西勇輝、青柳晃洋、秋山拓巳。彼らのピッチングにも正捕手不在の影響が出そうだ。
「矢野監督は一軍コーチ時代、能見篤史(現オリックス)を呼んで、『坂本を育ててくれ』と言っていました。能見は坂本について、『打撃力があるわけでもなく、突出して肩が強いタイプでもない。捕球も配球も平均点、そつなくこなすタイプ。個性のない捕手がアピールするのは大変なこと』と話していました」(球界関係者)
矢野監督は特定の捕手に任せ切るのではなく、「捕手併用制」を理想とする指揮官でもある。昨季序盤戦はその采配が裏目に出て失敗したが、梅野故障の間、併用論をまた仕掛けてくるのかもしれない。
併用論が失敗した場合、巨人を浮上させるだけではなく、開幕ダッシュの好ムードも消えてしまうだろう。
「梅野は今季中に国内FA権を取得します。残留を明言していないのも気になりますが、本当に強いチームは、主力選手を欠いた時にチーム全体でカバーできるものです」(前出・プロ野球解説者)
>>阪神・梅野、今オフのFA流出は避けられない? 矢野監督が固執する捕手併用制はV争いにも悪影響か<<
打線にも影響が出そうだ。梅野の打率は2割5分台だが、得点圏打率は6割1分5厘と驚異的な数値を残している。その梅野が7番にいることで、6番・佐藤輝明がフルスイングできているのだ。状況次第では捕手だけではなく、チームに合流して間もないメル・ロハス・ジュニア外野手やラウル・アルカンタラ投手も緊急昇格させることになるかもしれない。
開幕ダッシュに成功した力はホンモノか否か? 敵地で、トラの真価が問われる。(スポーツライター・飯山満)