兵庫県尼崎市で在宅医療に携わる長尾和宏医師のベストセラーをモチーフにした本作。主演の柄本は「高橋監督の作品に主演できて夢のような気持ち」と挨拶。役作りのため、長尾医師に同行して在宅医療の現場を回ったそうで、「近所のおじさんくらいの距離感で、目線を合わせて患者さんの手を握る」など、間近で見た所作を演技に取り入れた。
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奥田は高橋監督の作品と聞いて出演を即決。また、義理の息子との“親子”共演に、「主演ですからいい加減なことはできない。これまでと違って、邪魔せず役同士で存在する新しい境地に入った。一言で説明できないくらい素敵な現場だった」と振り返った。義父の言葉に、柄本も「家族で一番多く一緒に出ているので、フラットに入れた」とうなずいていた。
明るい末期ガン患者を演じた宇崎は、トレードマークのリーゼントを封印。「セットに25分かかる。病人らしくないと思って、白髪染めも抜いてバサバサの髪で出た。これが私の本当の白髪です」と笑顔。また、「監督にはお尻を写さないでくれとお願いしたんですけど、共演した余(貴美子)さんに丸見えで恥ずかしかった」と撮影中のエピソードも明かした。
患者の家族を演じた坂井。画面に映っていない時も役と同じ気持ちになったそうで、「積み重ねてきた気持ちを出し切った」と渾身の演技を披露。高橋監督は「65歳になった頃、どういう死に方をするかを考え始めた。自分が今考えられる理想の死という思いを乗せた」と語りつつ、映画にも登場するユーモラスな川柳で会場の笑いを誘っていた。
「何よりも嬉しかったのは、ここにいる俳優さんたちが参加してくれたこと。真夏の厳しい条件の中、乗り切ってくれたスタッフに感謝したい」と高橋監督。最後に、コロナ禍で苦戦が予想される中、「見て損はないと思ったら、いつもよりも勧めてほしい」と呼びかけた。『痛くない死に方』は2月20日からシネスイッチ銀座他にて公開。また、長尾医師の日常に迫ったドキュメンタリー映画『けったいな町医者』も2月13日から順次公開される。
(取材・文:石河コウヘイ)