権利行使直後に巨人、ヤクルトの2球団が獲得に手を挙げた井納は、6日にそれぞれの球団と交渉。報道によると、ヤクルトは2年総額2億円規模の条件と背番号「15」、巨人は年俸1億円規模の複数年契約と背番号「21」と互角の条件を提示したと伝えられている。
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実績はもちろん人的補償が不要なCランク選手ということもあり、ネット上には獲得成功を願うヤクルトファン、巨人ファンの声が多数寄せられている井納。ただ、過去10年の間に他球団にFA移籍したCランク選手を見ると、実は活躍した選手はそれほど多くない。
2011年オフに西武からオリックスに移籍した許銘傑は、西武でプレーした12年間で「263登板・49勝46敗29ホールド1セーブ・防御率4.13」といった成績を残したリリーフ投手。当然オリックスでも勝ちパターンの一角としての活躍が期待されたが、いざ迎えた2012年は開幕直後から打ち込まれる場面が目立ち2度の二軍落ちも経験。結局、同年は「37登板・0勝3敗10ホールド1セーブ・防御率5.29」と不振に終わり、さらに翌2013年は一軍登板が1試合のみと全くいいところがなかったためこの年限りで戦力外となった。
プロ入りした2005年から2013年まで中日で「186登板・61勝51敗16ホールド1セーブ・防御率3.57」といった数字をマークした中田賢一は、同年オフにソフトバンクに移籍。翌2014年は「25登板・11勝7敗・防御率4,34」と2ケタ勝利をクリアし、その後も2015年から2018年までは毎年20試合前後に登板するなど先発の一角としてチームに貢献した。
だが、2019年に一軍登板が1試合のみと不振に陥ると、球団は同年オフに中田を無償トレードで阪神に放出。阪神1年目の今季は3試合登板で未勝利に終わるなど思うような成績は残せていない。
2015年オフに中日から阪神に移籍した高橋聡文は、前年まで中日で14年プレーし「401登板・17勝14敗99ホールド1セーブ・防御率3.38」を記録したリリーフ。阪神加入後の2年間はいずれも50試合以上に登板し、2017年は防御率「1.70」と活躍を見せた。ただ、その後の2年間は計16登板と成績が大幅に落ち込み、2019年限りで現役を引退している。
2007年から2016年までソフトバンク一筋でプレーした森福允彦は、同年オフにFA宣言し巨人入り。ソフトバンク時代に「384登板・16勝14敗125ホールド18セーブ・防御率2.45」という成績を残していたため加入当初は期待も高かったが、翌2016年は「30登板・1勝3敗6ホールド・防御率3.05」と微妙な成績に。その後2018年は2登板、2019年は7登板にとどまったことから同年オフに戦力外通告を受けそのまま引退している。
加入後長期にわたって活躍したのは中田のみとなっているここ10年のCランク投手だが、中田以外の3名は全員リリーフであるため、移籍前球団でのプレーでたまっていた勤続疲労が移籍先でさらに蓄積され低迷を招いたという見方ができる。井納は先発・リリーフどちらもこなせる選手だが、移籍先では先発の座をつかみにいった方がいいかもしれない。
また、唯一の活躍例である中田は2016年に右前腕を痛めたこと以外は目立った故障がなかった。井納は2018年シーズン終盤に右ひじのクリーニング手術を受けているため、同箇所の故障を再発させないようコンディション管理に気を配ることも重要だ。
巨人有利とする報道も複数あった中、12日に巨人入り決定と報じられた井納。来季35歳を迎えるベテラン右腕は、果たしてどれだけの成績を残すのだろうか。
文 / 柴田雅人