報道では「恒心教」のフレーズだけが出ており、実際にそうした宗教団体があると思われがちだが、これはネット上でのネタ、ジョークの類が独り歩きしたものだ。
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「恒心教」の名前が生まれたのは、2012年ごろに遡る。匿名掲示板で荒らし行為をしていた固定ハンドルネーム(コテハン)の男性が、大学の入学書類をアップロードしたところ、あっという間に個人特定がなされてしまった。入学予定の大学名はもちろん、本名、通っている高校、自宅住所が露わとなった。慌てたコテハン男性は弁護士に相談。そこでネット民の攻撃対象は、この弁護士の男性へ移っていく。
弁護士男性は「ITへの強さ」を自称していたが、ネット民的にはツッコミどころも多かった。さらに弁護士男性は、不用意とも取れるIP開示請求を次々と行っていったため、こうした行為がネット民を面白がらせてしまい、結果的に「火に油」となってしまったと言えるだろう。
ネット上では、最終的にこの弁護士男性を「神」「尊師」と崇め奉る現象が生まれ、それがこの弁護士事務所名にかけたネーミングと言われる「恒心教」となる。元ネタは90年代に地下鉄サリン事件を引き起こしたオウム真理教だ。関連するイラストや、歌などがネット上で次々と作られ公開されていく。弁護士男性の事務所は「聖地」と崇められ、地図アプリのデータの書き換えや、爆破予告事件も起きた。
「恒心教」の活動は、ネットだけにとどまるものではない。弁護士男性の実家の墓に、大量のジュースをお供え物として捧げる、本名をスプレーで落書きするといった度を過ぎたいたずら行為が次々と行われるようになる。
弁護士男性は今でもネット中傷の被害者として、テレビ出演を行っており、そのたびにネタが蒸し返されている状況だと言える。大学の爆破予告で22歳の人物が逮捕されているところを見ると、リアルタイムで「恒心教」を知らない若い世代にも浸透していると見られ、この点は憂慮すべきかもしれない。