平田は2年前の2018年4月11日、この日と同じ東京ドームのジャイアンツ戦でプロ入り初先発を任されていた。初回に吉川尚にツーベースを許しゲレーロにフォアボールで、ツーアウト1‐3塁のピンチを迎えるも、マギーをセンターフライに抑え無失点に切り抜けると、2~3回は3者凡退。4回のピンチは現在の不動の4番・岡本をキャッチャーゴロで打ち取り、5回先頭の亀井にツーベースを打たれるも踏ん張り降板。5回78球でわずか3安打、1フォアボールと期待以上の快投を見せた。6回表に筒香のホームランで勝利投手の権利を得るも、パットンが打たれ初勝利が泡と消える“初勝利未遂”があった。マウンドを降りた6回に勝利投手の権利が発生するなど試合展開も前回と似通っていたため、当時を知る多くのファンは余計にザワつき、試合終了まで手に汗握る事となった。
初めてのお立ち台で、平田は「素直に嬉しいです」と第一声。「長いイニングを投げられるとは思っていなかった。とにかく1アウトずつ取っていこう」と無欲を強調し、降板してからは「勝ちがついて欲しいなと思いながら見ていました」と振り返りながら鼻を触り、若干目が潤んだかにも見えたが、「リリーフの皆さんが頑張ってくれたので、最高の一日になりました」と気丈に答えた。今後の先発については「ムリだと思います」とキッパリ否定し笑いを誘った後、「頼りない31歳ですが、まだまだ頑張ります」と結んだ。ドームに詰めかけたファンの中には感涙を流す姿も見られ、Twitterの#平田真吾初勝利チャレンジは、日本のトレンド2位まで登り詰めるなど全国的にも話題となった。
2013年のドラフトでHonda熊本から2位指名で入団した右腕は、昨年オフにオーストラリアで武者修行し、カットボールやツーシームを磨いた。「精度の問題」と近年あまり投げていなかったアマ時代の決め球フォークボールも復活。この日も岡本、丸らの中軸から三振を奪って見せた。今季はリリーフでの30試合、失点したのは4試合で、ここまで15試合連続無失点と、地味ながらチームに多大なる貢献をしていた平田真吾。苦労人が放った輝きは、とてつもなく眩しかった。
取材・文 ・ 写真/ 萩原孝弘