NHK広島放送局が行っている企画「ひろしまタイムライン」。戦時中に広島に住んでいた実在の人物が残した日記につづられた日常を現代風にアレンジし、「もし75年前にSNSがあったら?」という仮定で実際の日付に合わせてツイッターに投稿していくというもので、中学1年生の「シュン」、妊娠中の主婦の「やすこ」、新聞記者の「一郎」の3人のツイッターが展開されている。
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戦時中のリアルな日常をつづり話題になっていたアカウントだが、原爆が投下された日を迎え、ますます注目が集まり、「もし75年前にSNSがあったら」という関連ワードもトレンド入り。広島に原爆が投下された1945年8月6日朝、シュンは疎開先から広島に帰省するために汽車に乗り、やすこは空襲警報解除に一息つき、一郎は当直明けで自宅に戻ったことをそれぞれツイートで報告しているが、ツイッターユーザーからはそれぞれのツイートに「お願いだから汽車に乗らないで」「自宅から今すぐ逃げて」「どうか無事でいてほしい」「涙が止まりません」と悲痛な声を寄せている。
原爆が投下された午前8時15分過ぎからは市内の悲惨な状況や被爆者の生々しい描写がつづられているが、ネットからはこの試みに対し、「私たちの『逃げて』の声は届かないけど、同時に過去からの届かない声もあるんだろうしそういう声に耳を傾けたい」「新しい歴史の伝え方として、こういう企画はもっと増えてほしい」「胸が痛いけどこれが現実だったんだと考えるとちゃんと見なければと思う」といった反響が集まっている。
この取り組みは同日放送の『あさイチ』(NHK総合)でも取り上げられ、ゲストとして出演した女優の常盤貴子は「SNSは悪いことを言われることが多いんですが、今を感じられるものを使うことによって多くの人たちが忘れ去られようとしている、その思いをちゃんと引き戻すことができるというすばらしいものでもあると改めて思います」とコメント。「ひとごとではなく自分のこととして感じられる素晴らしいことだと思います」と話していた。
戦争を体験していない世代が、戦争や原爆の恐ろしさを追体験できる企画として、これからも続けてほしいという声も多く寄せられていた。
この大反響を受け、企画をしたNHK広島放送局に話を聞いたところ、同局の上松圭チーフプロデューサーは「原爆のこと自体は、学校で習って多くの人が知っていると思います。でも、そこに一人ひとりの人間がいたリアリティを、多くの人が共時性をもって体感してくださいました。SNSでのその広がりは、私たちが思った以上で驚いています。8月7日以降も続く3人の日々、そして社会の変化を引き続き体感していただければ幸いです」と、コメントを寄せた。
同局広報によると、「ひろしまタイムライン」企画は、1年前の20代女性ディレクタ―の発案から始まったという。局内でも、若い世代に戦争をどうやって伝えていくかが課題となっていたところ、SNSを使った企画が提案された。それを元に、当時の広島市民のリアルな日記を探し、毎日SNSに投稿するという企画となったという。
Twitterに投稿している11人のメンバーは、現役高校生が5人、元TBSの久保田智子アナウンサー、地元タウン誌のライターなど年齢、立場も様々。日記が取り上げられた「シュン」「やすこ」「一郎」と立場の近いメンバーが集められた。「シュン」のモデルになっている方は88歳でご存命とのことで、シュンを担当している高校生5人は実際にお話をうかがい、ツイートに生かしたそうだ。
75年前の日記を毎日ツイートしていく上で、今存在しないものを伝える苦労などがあるというが、思わぬ偶然もあった。コロナ禍で問題となっている「自粛警察」が戦時中にも存在したこと、学生は空襲で授業が中止になっていたこと、大きな不安の中で暮らしていること。この偶然の重なりが、今回のSNSでの反響につながったのではないかと、担当者は話した。
原爆の日に注目された「ひろしまタイムライン」だが、今後も1945年と同じ月日で年末まで投稿されていく予定だという。原爆投下以降、そして戦後の日々がリアルなツイートで綴られていくので、それまでの日々の投稿と合わせて体感し、平和について改めて考えてみたい。
シュン@ひろしまタイムラインの公式Twitter
https://twitter.com/nhk_1945shun
やすこ@ひろしまタイムラインの公式Twitter
https://twitter.com/nhk_1945yasuko
一郎@ひろしまタイムラインの公式Twitter
https://twitter.com/nhk_1945ichiro