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本作は、劇団チキンハート主宰の遠山雄の親しい知人と、そのお父さんについての実話を元にした作品。大山監督にとって長編映画初監督作品であり、渡辺にとっても意外なことにこれが映画初主演作となる。昨年、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に出品され、観客賞を受賞した。
渡辺は初主演の感想を問われると、「面白いことができそうだと思ってこの話を受けた。テレビを中心にやってきて、知らない間に役者として表現がわかりやすいものばかりをやっていたような気がする。それがいいか悪いかって考えた時に、役者としての閉塞感も感じていた時期。これはタイミングがいいなって。たとえ失敗してもこれはインディペンデントな作品でもあるし、俺には傷がない。無責任だけど楽しんでやろうって」と照れ臭そうに心境を明かす。
本作については「洗練されたエンタメ作品ではないので好みは分かれると思います。でも、何かしら引っかかるものはあると思います。見れば見るほど味が出ると言ってくれる人もいて、自分もそう思っています」とコメント。コロナ禍という状況で、新宿で初日を迎えた際、舞台あいさつが行えなかったことにも触れ、自ら劇場に足を運んで、見終えた観客を外で出迎えたというエピソードも披露。「ふらっと劇場に立ち寄った体で、自粛期間を終え見にきたお客さんに会いに行きました。自粛明けで僕らの映画を見にきてくれるお客さんはありがたいなって」と述べると、榎本はその時のお客さんの驚きようを紹介。「(突然渡辺が現れたので)お客さんが二度見どころか五度見くらいしていた」と話して笑わせる。
渡辺はステイホーム中の過ごし方についても、「自粛期間中は片付けを始めまして、役者として初めて断捨離というか、溜まりに溜まった台本をシュレッダーにかけるという作業をしました。まだ終わっていません」と紹介。「コロナの中で人間的な成長もあった。単純に自信も失ってしまって、役者として再開した時にまた自分は仕事をもらえるのか不安になりました。僕はこの映画に救われています」とため息。
「今年最初の仕事が舞台。1か月近く練習して劇場入りして中止になった。初めての経験だったので、これは堪えました。そのあとも正直、舞台のオファーはあったけど、いつ収束するのかわからなかったので、断りました。また中止になるんじゃないかって。こんなにきつい経験はない。今、撮影も少しずつ始まっていますけど、振り切ってやりにくい。今後については自分は自分から何かを仕掛けるタイプの人間ではない。後追いでいいから何か見つけた人に乗っかって頑張っていきたい」と話していた。
(取材・文:名鹿祥史)