メガマウスは、1976年にハワイ沖でアメリカ海軍の調査船によって発見された、比較的最近発見されたネズミザメ科のサメである。熱帯から温帯の深海200メートル付近に生息しており、主食はプランクトン。サメの中でも原始的な形態を残しているが、深海に生息していることもあってか個体が確認された事例が非常に少なく、研究もまだ途上段階である。
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そんな珍しいメガマウスだが、例外的に日本は目撃・捕獲例が多い地域になる。地理的に深海が近いためとも考えられているが、なぜ日本でここまで多く確認されているのかはっきりした理由はわかっていないという。
今回、館山沖で確認されたメガマウスは体長約6メートルのメスの個体。波左間の沖合約800メートルの位置に設置してある網の中におり、5時頃に漁協が発見。地元のダイビングサービスの男性が現場に潜って確認し、その姿を至近距離で撮影することに成功した。これまでにも定置網や近海に迷いこんできたことはあるが、弱っていることがほとんど。今回は非常に健康な状態で、活発に泳いでいたという。研究者も「ここまで至近距離で生きている状態のメガマウスが撮影されるのは非常に珍しい」と話している。
ちなみに、メガマウスについてはある都市伝説が存在する。それは「大地震が来る前に現れる」というものだ。確かに、日本近海での捕獲記録を見ていくと、2007年の新潟中越沖地震しかり、2011年の東北地方太平洋沖地震しかり、発見から数日〜数か月後には地震が発生している事がわかる。一説には、サメに存在している微弱な電流を感知するロレンチーニ器官が地震の前に発生する異常を感知しているのではないかと言われており、今回の発見も関東を中心に多発している地震と関連付けられる向きも大きい。
しかし、深海生物や海洋生物の漂着と地震についてはほぼ関連性がないと見られている。珍しい生物が発見され、ニュースになったことで人々の記憶に残ることが多く、その後に発生した災害と関連付けられてしまうというのが真相のようだ。
なお、今回のメガマウスは黒潮の流れに乗って近海にやってきたと考えられている。元気な個体だったので、網から放してやったとのこと。幻のサメは、今も深海のどこかを泳いでいるのだろう。
(山口敏太郎)