そんな「5月11日に地震が起きる」という予言は、果たしてどこから来たものなのか。それにはある経済誌が関係している。
俗に「エコノミスト誌の予言」と言われるもので、イギリスの週刊新聞紙「エコノミスト」誌は世界有数の政治経済誌の一つ。年末には、翌年の世界情勢について論じる「世界はこうなる(The World in ○◯(来年の年号)」という特集誌が発行されるのだが、その表紙が毎回かなり凝ったデザインであり、必ず何らかのメッセージを含んでいると言われているのだ。現在は「2019年世界はこうなる」の表紙が、新型コロナウイルス感染症の蔓延を予言していたのではないか、などと注目されている。
今回の地震の予言で注目されているのは、数年前「2015年世界はこうなる」の表紙のもの。写真や絵のコラージュで、世界中の政治家が青空の下に集っているのだが、背景にはキノコ雲が上がっていたりなど、不穏なモチーフも含まれている。
そんな表紙の右隅には、政治家たちを見上げる「不思議の国のアリス」のアリスの姿が描かれている(テニエルによる挿絵の、樹上のチェシャ猫を見上げるアリスの絵を左右反転したもの)。このアリスの足元に「11.5」「11.3」と数字が書かれた矢が2本刺さっている。欧米では日にちを「日、月」の順で表記するため、「11.3」と書かれた矢は3月11日に発生した東日本大震災を指し、そこから「11.5」は「5月11日に同じくらいの規模の地震が起きる」ことを意味しているのではないかと言われているのだ。この表紙の左下には歪んだ地球儀があり、そこに描かれた日本は東海地方から関西にかけて欠落しているものであったため、東海地震や南海トラフ地震を予言しているのだ……というものだった。
しかし、前述の通り、この予言は「2015年世界はこうなる」の表紙だ。つまり、この表紙のエコノミスト誌が発売されてから、毎年のように「5月11日に地震が起きる」と言われ続けている予言なのだ。
そもそも日本は地震が多い国であり、震度3以上の地震も数日に一度は日本のどこかで起きているものだ。日々の地震や災害に対する備えを怠らないようにするのは当然としても、不確かな予言に惑わされないよう心構えをしておきたいものである。
(山口敏太郎)