この一件をきっかけに、世間では改めてネットの誹謗中傷が問題視され、社会現象となっている。
メジャーリーガーのダルビッシュ有選手もこれを受けて、24日に自身の公式Twitterを更新し、「誹謗中傷する人に効く言葉3選」の投稿が注目された。
ダルビッシュによれば、「おめでとうございます。」「それは良かったです。」「あなたが幸せそうで私も幸せです。」という3つの言葉を、中傷コメントの内容に関係なくランダムに使い回すことで、自分に向けられる中傷コメントがなくなるという。また、その際、「大事なのは相手がAIだと思い、自分もAIになりきること」というコツも添えて推奨している。
この意図には、中傷コメントをする相手の「傷つけたい、感情的にさせたい」という狙いを外すほか、コミュニケーションは取りつつも相手に手応えを感じさせず、「こいつには何を言ってもだめだ」と思わせるという目的があるという。また、「無視をするのが一番いいのでは」という意見に対しては、中傷コメントがたまに来る程度ならそれでもいいかもしれないが、有名人だと中傷コメントの数が多くなることもあり、無視を続けていてもストレスになってしまうのだという。
実際に、この方法が相手に与える心理効果は大きいと思われる。返した内容が相手の狙いから外れているため、一時的にエスカレートする恐れはあるかもしれないが、機械的な反応を続けることで、そのうち相手に飽きや疲れを生じさせることができるだろう。
誹謗中傷コメントをする攻撃的な人の中には、行き過ぎた正義感や自己主張といったほかに、相手の感情をコントロールすることで自尊心を満たそうとしているケースがあり、このようなケースでは、相手に何かしらの手応えがあるまで執拗に中傷行為を続ける傾向がある。そのため、無視をしても反応を確かめることができるまで粘着してきたり、その中で内容がエスカレートしてしまうこともある。その点、この方法では、相手のコメントに応答しつつも相手の自尊心を満たすことはなく、満足な手応えを感じることができずに欲求不満状態になった相手は、そのうちターゲットを変える可能性が高いだろう。
また、この方法には、意外な心理効果もある。
「プライミング効果」といって、意識・無意識に関わらず、先に見たものが後の考え方や反応に影響を与えるという心理現象があり、「引き寄せの法則」や「マインドコントロール」のメカニズムを説明できるものと言われている。ダルビッシュの提案する方法では、繰り返しポジティブな言葉を目にすることで、プライミング効果によって自分にも相手にもポジティブな感覚を得やすくなるという効果を与えることが期待できる。また、第三者がやりとりを見ていて不快感が少ないという点もメリットの一つだ。
いずれにしても、急速に発達していく情報社会の中で、我々ネットユーザーは、その適切な使い方やコミュニケーションのあり方について、試行錯誤しながら答えを見つけていく段階にあるようだ。
そして何より、心から木村花さんのご冥福をお祈りしたい。
文:心理カウンセラー 吉田明日香
記事内の引用について
ダルビッシュ有(Yu Darvish)公式ツイッターより
https://mobile.twitter.com/faridyu/status/1264267467766915077