芸能人の政治発言自体を批判する人や、内容をしっかりと理解していないのに議論に参加することで「広告塔にされている」と批判する人もいれば、「よく言ってくれた」と芸能人の影響力に感謝する賛成派の人など反応は様々。中には、「よく分からないけど、この人が言うなら間違いない」と、影響を受けてしまう人もいる。
もちろん、自分の意志と近いからという理由で賛同している人も多いが、内容をあまり理解していなくても、芸能人のツイッターなどのSNSのリプ欄へ賛同意見を送る人もいる。これは、政治的な発言にかかわらず、気軽に触れ合うことのできるSNSの特性上、よく芸能人のリプ欄で見られる現象でもある。
こうした人たちの心理には、「ファンだから賛同して芸能人に喜んでもらいたい」といったものや、「好きな芸能人に好印象を持ってもらいたい」といった、ファン特有の心理が働いている場合がある。
また、ファンの心理とは無関係に、賛同意見はリツイートや「いいね」を得やすいため、それが目的で賛同するといった、承認欲求を満たすための行動である場合もある。
そして、大してファンではなくても、たまたま目に入った芸能人の目を引くツイートについ反応してしまう場合もある。これは、街で芸能人を見かけた時、大してファンではなくてもつい声をかけたくなる心理と似ていて、めったにない機会を無駄にしたくないという「希少性の原理」に基づいた行動と言える。また、そうしたラッキーな出来事に遭遇したことを誰かに自慢したいといった心理が働くこともあるだろう。
また、単純に、目の前にいる人に良く思われたいという心理が関係している場合もある。実際に芸能人に出会った時などでも、本当の意志とは別に、特にファンでもない芸能人のことをほめたり、ファンだと言ったりするケースと同じだ。これは、日常のコミュニケーションでもよく見られる「同調行動」と呼ばれる現象で、相手に意見や趣向を合わせることで相手に好印象を与えようとする行為である。
これらの心理の働きは、芸能人という存在に特別感を抱いている人ほど強く表れるだろう。
芸能人の政治参加を批判する声の中には、これらのような、芸能人の意見に流されやすい人への影響を指摘するものもある。一方、芸能人が政治的発言をすることによって、それまで政治に無頓着だった人が、政治に興味や関心を持つきっかけになるメリットもある。
国民の政治参加の輪が広がるほど、民主主義国家は本来の機能を発揮できる。正解はどうであれ、自分たちの住む国の政治について考え、自分の意見を持つことが重要であることは間違いない。
文:心理カウンセラー 吉田明日香