世界規模での感染拡大の不安によるストレスはもとより、外出制限に伴うストレスや、買い出しなどで必要があって外出した際にも他人との距離感に気を遣わなければならないなど、環境の変化による不安や緊張が与えるストレスは計り知れない。
過度な精神的なストレスは、不安感を増幅させたり、イライラしやすくなったりと、情緒不安定を引き起こす原因になる。その状態が長く続くと自律神経の働きに悪影響を与えやすくなり、睡眠障害や動悸、過呼吸といった自律神経症状が現れたり、免疫力が低下してしまうなどの恐れもある。
ストレスを溜め込まないようにするためには、ストレスをどうやって軽減させるかが重要なポイントになる。そこで、「ストレスコーピング」という考え方を参考にしたい。
ストレスコーピングとは、人がストレスと向き合い、対処する過程について考えられたもので、「コーピング(coping)」には「対処する」という意味がある。
人は、自分に与えられた心理的・身体的なストレッサー(ストレスの原因)を認識した上で、それに対してどのように対処すべきかを考える。ストレス源をわかった上でうまく対策を取れば、ストレスによる心理的負担は少なくて済むのだ。
ストレッサーに対処するためのストレスコーピングの具体的な方法には、大きく分けて「問題焦点コーピング」と「情動焦点コーピング」の2種類がある。
「問題焦点コーピング」とは、ストレスの元となっている原因を、無くしたり変更をしたりすることで、ストレスを減らす方法のことを言う。例えば、人間関係において、ストレスに感じている人の問題行動を直接注意して改善させようとする、といった行為などがある。
コロナ禍においては、自粛中の運動不足にストレスを感じている時に、ストレッチやダンス、ヨガなど、室内でもできる運動を取り入れることで運動不足を解消するという直接的な問題の解決が、「問題焦点コーピング」だ。
「情動焦点コーピング」とは、自分がストレスに感じている物事に対する考え方を変えることでストレスを緩和させる方法だ。
例えば、思春期の子どもの反抗的な態度に対して、「生意気で腹が立つ」という感情ばかり優先していればストレスが溜まる一方だが、「大人になるために必要な成長段階なのだ」と腹が立つ対象の見方を変えれば、ストレスと感じにくくなる。
コロナ禍において言うと、会社や学校が休みになり夫や子どもが家に居ることで日中の家事が増えた主婦が、「家族がずっと家に居るせいで疲れる」とストレスを感じている場合、「家族団欒の時間を持てる良い機会」あるいは「適度に疲労感があった方がよく眠れる」などのように捉え方を変えることでストレスを軽減させることができる。
ただし、捉え方を工夫する際には、心から納得していない考え方を実践しようとして無理に思い込もうとすると、逆にストレスを溜めることになってしまう場合があるため、注意が必要だ。捉え方を変化させたい時は、あくまでも自分の納得できる考え方で、かつなるべくポジティブな捉え方に落ち着くのがベストである。
ストレスとの向き合い方について考え、問題解決能力を鍛えることは、コロナ禍においてだけではなく、日常生活の暮らしやすさにも繋がる。ストレスとうまく付き合い、身も心も健康な生活へと近づけるだろう。
文:心理カウンセラー 吉田明日香