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笑いでなく「泣き」を追求、志村けんさんの「シリアス無言劇」シリーズとは

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志村けんさん

 3月29日に70歳で亡くなった志村けんさんは、コントを通してストイックに笑いを極めた男として知られる。そんな彼が、90年代には「笑い」ばかりではなく、「泣き」も追求していたのは、あまり知られていない。

 その集大成とも言えるのが、人気番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』(フジテレビ系)内で放送された「シリアス無言劇」と呼ばれる一連のシリーズである。

 タイトルの通り、セリフはなく、オカリナ奏者の宗次郎による『悲しみの果て』のBGMに乗せて、志村さんと、当時の相棒として活躍していた石野陽子(現・いしのようこ)がサイレントドラマを繰り広げる。
 その内容は、老人役の志村さんが過去を回想しながら死を迎えるといった、切ない余韻を残すものから、妻であった石野が自分の元を去ったため、志村さんが男手一つで子供を育てるも、アルコール中毒と過労の果てに血を吐いて死ぬといった、救いのない展開まで多くの内容が見られた。子供ながらに「トラウマ」となった視聴者も多いようだ。

 伊集院光は志村さんの死を受けて、ラジオ番組『伊集院光とらじおと』(TBSラジオ)で、この企画について語っていた。かつて、伊集院が志村さんから聞いたところによれば、「悲劇は喜劇より上」「笑わせるのは簡単だが泣かせるのは難しい」と批判する人がおり、悔しさを感じた志村さんは泣ける悲劇コントを思い立ったのだという。さらに笑いの中に突然、悲しいドラマが始まり、再び笑いが始まる流れも意識していた。志村さんは笑いの作り方において、「メリハリ」を好んだ。ナインティナインの岡村隆史にも酒の席で、「本命のネタを生かすために、捨てるネタがあっても良い」といったバランスの取り方を説いていた。「シリアス無言劇」はまさにそうした作品と言える。

 「シリアス無言劇」は長いものだと、30分近い作品もあった。実に番組の半分を占める分量だが、視聴率が落ちることはなかったという。それだけ志村さんの作り上げるコントのクオリティの高さが、際立っていたと言えるだろう。

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