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やくみつるの「シネマ小言主義」 アメリカ版「私、失敗しないので」『ハリエット』

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提供:週刊実話

 アメリカでは誰もが知るという実在の奴隷解放運動家、ハリエット・タブマンの激動の人生を描いた本作。

 アメリカ南部の農園の奴隷として生まれた女性が、たった1人、自由を目指して奴隷制度が廃止された州へと脱走。せっかく逃げたのに、家族や仲間を助けるために奴隷州に舞い戻り、解放組織の一員として10回以上も往復して70人以上の奴隷の逃亡を成功させます。

 恥ずかしながら、そんな英雄がいたことはもちろん、当時、黒人の中に奴隷と自由黒人が存在していたこと、白人でもクエーカー教徒は奴隷解放に協力的だったことを、自分はこの映画を見て初めて知りました。

 脱走した州で新しい氏名であるハリエット・タブマンを名乗り、自由黒人になったあと、生涯、奴隷解放に身を捧げた彼女は、奇跡的に一度も失敗しなかったといい、まさに「私、失敗しないので」のアメリカ版です。

 仲間の脱走を手引きする中で、何度もピンチに襲われる様が映画では描かれていて、ハラハラさせられるのですが、神の導きのような逆転劇で1人の脱落者もなく次々と成功させていきます。なので、旧約聖書でイスラエルの民を解放に導いたモーゼになぞらえて、「黒人たちのモーゼ」と呼ばれていたとか。

 その後の彼女について、映画では詳しく描かれていませんが、奴隷制度そのものを撤廃するために、南北戦争で黒人兵を率いて戦い、750人もの奴隷解放を実現。その偉業を讃えて、新しくなる米20ドル紙幣に史上初めてアフリカ系アメリカ人の肖像の採用が決まりながら、トランプ政権では先延ばしを続けているそうです。

 初の黒人大統領が登場した米国。しかし、白人至上主義のトランプ大統領がとって代わり、今、再選をも目指そうとしています。

 時代は変わったように見えて、150年経って人種差別は根深く残り、事あるごとに、ゾンビのように復活してくるものなんですね。

 この度の新型コロナウイルス騒動では、日中韓を含む東洋人への差別意識が欧米各地であからさまになっています。これまで日本人だと名乗れば、ある程度はリスペクトしてもらえたものですが、一気に突き落とされましたね。

 日本人の入国を拒否する国が増え続けている今、趣味の海外めぐりも、当分、断念せざるを得ません。次の候補地だったサウジアラビアまで渡航を止められるとは、想像もしていませんでした。こうなった以上は、国内の地方めぐりに全面シフト。それを余生の楽しみにしようか、と夫婦で話しているところです。

_____画像提供元_(c)Universal Pictures
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■ハリエット
監督/ケイシー・レモンズ 出演/シンシア・エリヴォ、レスリー・オドム・Jr.、ジャネール・モネイ 配給/パルコ 3月27日(金) 全国順次ロードショー。
■1849年アメリカ、メリーランド州。ブローダス農場の奴隷ミンティ(シンシア・エリヴォ)は、幼い頃から過酷な労働を強いられていた。そんな彼女の願いはただ1つ、いつの日か自由の身になって家族と共に人間らしい生活を送ること。そんなある日、借金返済に迫られた農場主がミンティを売りに出す。もう二度と家族には会えなくなると考えたミンティは脱走を決意。奴隷制が廃止されたペンシルベニア州を目指し、たった1人で旅立つが…。

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漫画家。新聞・雑誌に数多くの連載を持つ他、TV等のコメンテーターとしてもマルチに活躍。
『情報ライブ ミヤネ屋』(日本テレビ系)レギュラー出演中

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