一般客に非公開で本場所が開催されるのは、戦時中に傷病軍人を招待し開催された1945年6月の夏場所以来約75年ぶりのこと。日本相撲協会は極めて異例の決断を下したと言えるが、全国各地で感染が拡大し続けているだけに、ネット上のファンからは「プロ野球も無観客開催だし仕方ない」、「苦渋の決断だと思うけど尊重したい」、「今通常開催したら批判凄いだろうしこれが正解だろう」と肯定的な反応が寄せられている。
ただ、中には「無観客にしても出待ちなどで人が集まるから意味ないだろ」、「上位力士は休場多いし、いっそのこと中止して休養させた方がいいんじゃないか」、「この時期に公共交通機関で集団移動する必要性がどこにあるのか」と、今なお中止を要求しているファンもいる。
一部で言われるように、興行を無観客にしたところで、出待ちなどを目的に会場を訪れる人は減らないのだろうか。例えば、相撲以外の競技でいうと、1日に行われた東京マラソンでは応援自粛が呼びかけられていたにもかかわらず、沿道に7万人以上の観客が集結している。また、同日に無観客で行われたプロ野球・ヤクルトの二軍戦でも戸田球場のそばにある土手に、球団からの自粛要請を無視した観客が多数集まっていたという。
こうした事例を考慮すると、春場所でも会場周辺で同様の状況が起こり、感染リスクが高まる可能性はある。ただ、前述の東京マラソンで例年100万人とされる観客が7万人に激減しているところを見ると、春場所の無観客開催もある程度の効果は見込めるだろう。
一般的に上位とされる三役以上の力士の休場状況は、近年では最悪と言っていい。具体的には小結、関脇、大関、横綱は、先場所までの直近6場所では毎場所2名以上が休場を余儀なくされている。特に、角界最上位の横綱である白鵬・鶴竜の両名は、それぞれ3場所ずつ欠場するなどコンディション維持に苦戦。春場所を強引に開催するよりは潔く中止にして、空いた期間を力士の休養・コンディション調整に充てた方がいいと考えるファンも多いようだ。
今回の本場所開催地が東京・両国国技館であれば、各力士は部屋から歩いて直接会場入りすることが可能だった。ただ、今場所は大阪で行われるため、各力士はどうしても集団で新幹線で移動しなければならない。この移動で感染リスクが高まるのではと危惧されるのも、ある意味当然と言えるのかもしれない。
以上のように、開催方針が決まって以降もまだ根強く中止の声がある春場所。もし力士の新型コロナ感染が発覚した場合、その時点で即打ち切られるとも伝えられているが、誰1人感染者を出すことなく千秋楽まで開催し続けることはできるのだろうか。
文 / 柴田雅人