内村世代が手掛けたテレビ番組を観て、お笑い芸人を目指したのはサンドウィッチマン・富澤たけし。すでに社会人として働いていた伊達みきおを口説き落として、コンビを結成。漫才頂上決戦「M-1グランプリ2007」で、史上初となる敗者復活戦からの優勝を成し遂げて、世に出る機会を得た。
自然体で、老若男女が理解できるネタがウリ。18年には、「日経エンタテインメント!」が公開している「好きな芸人」ランキングで、過去14回1位を独占していた明石家さんまを陥落させて、初のトップに躍り出た。「タレントパワーランキング」芸人編とあわせて、2年連続首位を堅持している。
内村がメインMC、富澤&伊達がレギュラー解答者として手を組んでいるのが、日本テレビ系クイズバラエティ「THE突破ファイル」だ。好感度芸人の二段重ねといっていい。同番組は、事件や事故といったトラブル、絶体絶命のピンチをひらめきによって突破した方法を、実録ドラマ化。クイズ形式で知恵や“突破法”を学んでいく。ドラマは、自衛隊や海上保安庁などの協力を得て、新進気鋭の俳優たちが演じる。すべて講習を受け、実際の施設や機体内で撮影することが珍しくないため、バラエティの範疇を超えたリアリティドラマに仕上がっている。
本物の俳優をしのぐ怪演ぶりを発揮しているのが、「お笑い第7世代」の若手芸人たち。お笑い養成所やコントで会得した演技力をフルに発揮。特に霜降り明星、EXIT、かが屋、ハナコ、宮下草薙などは、可能性が増している。先輩に当たるアルコ&ピースやアキラ100%、さらにサンドまで俳優として参加する。内村が思わずVTRに見入ってしまうほどで、映像力、演技力は称賛に値する。
第7世代は今期クール、連ドラでも活躍している。霜降り・粗品は「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(フジテレビ系)、相方のせいやは「テセウスの船」(TBS系)。兄弟漫才師のミキ・昂生は「恋はつづくよどこまでも」(同)で、そろって連ドラを初経験中だ。
芸人の脱芸人化。俳優へのリボーン。思えば、80年代はイッセー尾形もでんでんも、芸人だった。同番組から芸人の枠組みを突破する者が現れる可能性も、ゼロではない。
(伊藤由華)