正捕手候補1番手は伊藤光。オリックスから2018年シーズン途中にトレード移籍でベイスターズに加入すると、昨シーズンは開幕から正捕手の座を奪取。7月30日に骨折で離脱するなどのアクシデントもあったものの、84試合出場、打率.254、ホームランは自己最多の8本と活躍した。不遇だったオリックス時代の鬱憤を晴らすべく、「勝つために全力を尽くしていきたい」と決意している。
ただ、伊藤も故障がちな点や、得点圏打率の低さ、セ・リーグで最低だった盗塁阻止率などの課題もある。嶺井はオフにホークスの松田宣浩とのグアム自主トレに帯同し、レベルアップを図った。セールスポイントでもある積極的で、意外性のあるバッティングに磨きをかけ、目標に掲げた「100試合出場」を達成したいところだ。
戸柱は奄美の秋季キャンプから「走り方」の変更に着手し、下半身、上半身を連動させることを課題に挙げていた。高い技術のフレーミングを駆使したキャッチングと共に、昨年後半に見せていた勝負強いバッティングをアピール出来れば、キャッチャーとして唯一の左打ちのアドバンテージもあるだけに、出場数も増して行くことであろう。
弱冠21歳の山本は、強肩を武器に勝負したい。上記3人の盗塁阻止率は、一番高い嶺井でも.280と、付け入る余地はある。バッティングもファームではあるものの.255と、2年目のキャッチャーとしては十分な数字を残した。8月28日には一打サヨナラ、2死満塁の場面、最後の野手として登場し、見事にライト前にヒットを放つなど、“持ってる”男だけに期待も大きくなる。
ファームには、オリックスから出戻りの高城俊人も控えており、ルーキー時代の濱口遥大と専属バッテリーを組んでいたことから、再び起用されることも予想される。パ・リーグの野球を経験し、キャッチャーとしての深みが増している点も加味すると、一気に割って入ることも不思議ではない。
シーズン通して1人のキャッチャーがマスクを被り続けることは、ラミレス監督の采配や、球界のトレンドを鑑みても考えにくい。ベイスターズのキャッチャー陣は一長一短ある個性派揃いだけに、まずは開幕一軍争いに注目してみたい。
取材・文 ・ 写真/萩原孝弘