今季は鈴木にとって、カープの4番としてだけでなく、あらゆる意味で特別な一年となりそうだ。
昨シーズンは首位打者と最高出塁率に輝き、自身初の打撃タイトルを手にした。出場試合数、打席も自己最多となり、カープの「顔」として十分な活躍を続けた。
反面、チームは4年ぶりに優勝を逃し、Bクラスに沈んでいる。レギュラーに定着した2016年からの3年間、何れも優勝を果たしていただけに、昨年のチームの成績は誰よりも不本意に感じていたことは想像に難くない。
2020年シーズンは佐々岡新監督が新たに就任し、新しいカープの再出発の年と言える。チームの転換期こそ、さらに鈴木の打棒に大きな責任と期待が込められることも確かであり、プレーヤーとしてさらに飛躍しなければならない1年になるだろう。
また、東京五輪でもすでに侍ジャパンの4番としての出場が確実視されている。稲葉篤紀日本代表監督は就任当初より「右の4番」への強いこだわりを明かしており、現段階では鈴木誠也「1択」であることは揺らいでいない。
何より、初優勝に輝いた昨年のプレミア12では全試合で日本の4番に座り、そして3試合連続本塁打、さらには打率も4割を越え、MVPに選出されている。主軸としてチームを引っ張り、2009年第2回WBC以来となる世界大会での優勝に導いた功績は、貴重な事実として人々の脳裏に刻まれる。日本の4番という立場は、3大会振りでの開催される五輪での野球競技での成績はもちろん、世界中に野球の魅力を伝える「伝道師」としての役割も少なからず担うはずだ。
既に球界を背負う存在にまで成長したものの、25歳という年齢からもまだまだプレーヤーとしての伸びしろは計り知れない。走・攻・守、全てのスキルにおいてトップクラスであり、また、試合を決定付ける場面などでの「神ってる」一打もファンは待ち続ける。昨年末には結婚したことも発表し、まさに公私とも充実し、さらに重要な一年を迎えることとなる。様々な節目の年となる2020年、カープの背番号1、鈴木誠也は球界No.1プレーヤーを目指し、邁進する。(佐藤文孝)