二軍本拠地でもあるジャイアンツ球場で、汗を流しているベテランがいる。陽岱鋼外野手だ。この時期、実績のある主力選手は若手を従えて、海外などで自主トレを行うもの。しかし、陽はあえて自分を追い込む環境を選んだという。
「ゲレーロが退団しても、チームはワールドシリーズ覇者・ナショナルズでも活躍したヘラルド・パーラを獲得しました。パーラはレフトでの起用が予定されており、センターには丸がいて、ライトにはベテランの亀井がいます。今季、結果を残さなければ、陽は本当にアブナイ」(スポーツ紙記者)
昨季の陽は110試合に出場したが、うち68試合は途中出場だ。2020年は5年契約の4年目だが、成績次第では球団が契約破棄を突き付けてくるかもしれない。そんな危機意識が陽を必死にさせたと見るメディアもあったが、そうではないらしいのだ。
「パーラは日本のピッチャーに対応できないかもしれませんよ」(米国人ライター)
そんな懸念も聞かれた。パーラが巨人と契約した当初から指摘されていたことだが、メジャーリーグでは「30歳を過ぎた野手」に対しては、ドライな評価を下している。移籍先を決めるオフの米フリーエージェント市場において、これまで積み上げて来たキャリアまで否定されるような低年俸提示しかされず、「だったら、レギュラー扱いしてくれる日本へ」という流れがあるそうだ。今季、日本球界にやってきた他球団の元メジャーリーガーも、そんな事情を抱えている。
もっとも、日本球界で活躍してくれれば、米FA市場での低評価なんて関係ないのだが、パーラに関してはこんな声も聞かれた。
「守備は本当に巧いですよ。でも、低めの変化球が苦手で…。日本のピッチャーはコントロールが良いので、失投も少ないし、厳しい結果になると思われます」(前出・同)
「パーラに弱点アリ」の情報は、すでに他のセ5球団にも広まっている。そうなると、陽にもスタメン復帰のチャンスは十分にある。
「亀井は今季38歳ですよ。休みながらの起用になるでしょうし、陽だけではなく、石川、重信、山下といった他の外野手も出場機会が増えそう」(ベテラン記者)
原辰徳監督を始めとする首脳陣は、山下航汰に期待しているという。昨年は高卒1年目ながら支配下登録を勝ち取り、イースタンリーグ(二軍)で首位打者のタイトルも獲得した。巨人ファンの間でもイチオシの若手だが、山下は左打ち、陽は右打ち。対戦ピッチャーによっては、陽が優先的に起用されるケースも出てくるかもしれない。
一部報道によれば、元木ヘッドコーチが陽に「もう、後がない」とハッパを掛けたとあったが、これも「パーラに弱点アリ」の状況によるものなのかもしれない。外野のレギュラー争いが熾烈化すれば、連覇も見えてくる。しかし、巨人移籍以降、パッとしなかった陽が期待されるところからして、「オフの補強失敗が響いているんだな…」と言わざるを得ない。(スポーツライター・飯山満)