村中氏は、先頃、科学誌『ネイチャー』主催の世界的な権威を持つジョン・マドックス賞を日本人として初めて受賞したが、日本国内ではほとんど報道がなく、新聞に至っては産経、北海道新聞の2紙のみが取り上げたにすぎない。
「子宮頸がんは毎年約1万人が新たに発症し、約3000人が亡くなっています。これを防ごうと登場したのがHPVワクチンで、2011年初頭から大手全国紙は、子宮頸がんワクチンに関して歓迎ムードの記事を掲載したのです。その潮目が変わったのは'13年3月に、朝日新聞が同ワクチンを接種した都内の女子中学生に深刻な副作用が生じたとする記事でした。それ以降、メディアから『HPVワクチンは危ない』という報道のみがタレ流され、その結果、反ワクチン運動が巻き起こり、日本の同ワクチン接種率は70%から5%以下にまで激減したのです」(医療ジャーナリスト)
HPVは主に性行為によって感染する。当然、その年齢に達する前の接種が望ましいが、親や祖父母世代には“10代前半の若い女性が性行為の準備としてワクチンを接種する”ということへの抵抗があった。だから、接種後に深刻な副作用が生じる恐れがあるという報道に感情的になった。
「一部の医師は、報道されたような副作用がワクチン接種を原因とするものではなく、別の背景があるのではないかと研究を進めたのです。こうした中、村中氏はワクチンについての誤情報を指摘し、安全性を説いたとして同賞を授与されたのです」(同)
ワクチンに関してはHPVだけでなく、風疹も麻疹も異常なまでに低い接種率の世代を作った歴史があることを忘れてはならない。