「キャバ嬢は普段、自分が癒す側にいるので、癒されるという事にとても飢えているんですよね。それである時、魔が差してホストクラブへ行ってしまいました」
ホストを訪れる客の中には、ストレス発散だったり、安らぎを求めてくる水商売の女性も多い。キャバクラ嬢は普段、酔った客に理不尽な罵倒を受けたり、お酒を飲まされ苦労しているからこそ、夜の同業者であるホストと気持ちを共有し、心惹かれていく者もいるという。麻美もまた自分の大変さをわかってくれるホストへ、のめり込んでいった。
「一度、アフターの時、ホストに“疲れたからホテルで休みたい”って言われて。ああ、やられるんだなと思ったら、本当にそのままベッドに倒れるように寝てしまったことがあったんです」
ホストという仕事に関して、表向きは若い女の子と会話し、楽しくお酒を飲みながら大金を稼げると思っている人もいるかもしれない。だが実際は、体調が悪い時でも、先輩から言われれば場を盛り上げるため大量の酒を飲み、暴言を吐かれても我慢しなければいけない。そのような過酷な状況で、必至にがんばるホストの姿を見た麻美は、自身も水商売で働いていることと、そんな彼を支えたいという母性本能から、ホストに貢ぐようになっていった。
「キャバで稼いだお給料は、ほとんどホストクラブに使ってましたね。毎日のように働いて、毎日のようにホストへ会いに行く生活。完全にホストに依存してました。でもある時、気がついたんです。どれだけホストに貢いでも心は満たされないって」
何か特別なきっかけがあったわけではなく、ある時フッと、このままではいけないという思いが心をよぎったという。この先も自分が夜の世界に身を置くことで、心は満たされず、何かに依存し続けてしまうと気がついた麻美は、夜の世界を棄てた。
「自分の中にある依存体質がキャバを辞めて完全に治まるかはわかりません。でも今は、太陽の光を浴びる生活に変えたからなのか、気持ちはとても安定しています」
彼女はキャバクラを辞めた後、運送会社の事務員として就職し、ホストとも縁を切ったという。
(文・佐々木栄蔵)