埼玉西武の菊池雄星投手(27)がポスティングシステムを使って、メジャーリーグに挑戦することになった。菊池は高校時代、日本のプロ野球球団ではなく、いきなりメジャーリーグと契約しようとしていた。“オトナの都合”でその夢は封印していたが、今回は「優勝に貢献してくれ、実績は十分。応援したい」と球団も話しており、正式な手続きを待つばかりとなった。
それと同時に伝えられたのが、菊池の代理人が決まったこと。スコット・ボラス氏である。ボラス氏はかつて、松坂大輔、中島裕之といった西武選手の代理人も務めている。松坂をレッドソックス入りさせた際は、総額5200万ドル(約58億8900万円)の超大型契約を勝ち取り、アメリカ中を震撼させた。
「ボラス氏の最後の粘りで、年俸額がさらにアップしました。当時のルールで交渉期限が切れる3分前まで交渉を続け、最後の一押しで年俸をつり上げたんです。あの時、レッドソックス側がこれ以上は払えないと回答していたら、松坂は西武に帰還しなければなりませんでした」(プロ野球解説者)
ボラス氏は現在ブライス・ハーパー、JD・マルティネス、マックス・シャーザーなどメジャーを代表する一流選手を多数抱えている。強引な交渉で高額年俸をブン取るため、「吸血鬼」の異名も頂戴しているが、自身のオフィスに選手のトレーニングルームを設け、球場で人種差別的な汚い野次をなくす運動にも参画している。菊池も「花巻東高校時代から見てくれたから」と、彼を選んだ理由を語っていた。
「西武は浅村、炭谷といったFA権を取得した選手の慰留に必至です。彼らを引き止めるためには年俸アップも必要ですが、西武は菊池を手放す際に得る移籍金を充てるつもり」(球界関係者)
菊池は好条件でメジャー挑戦することができそうだが、米国内ではこんな懸念も囁かれていた。
「ボラス氏は別のことでも注目されています。そちらが忙しくなれば、菊池の契約交渉に専念できないかも」(米国人ライター)
今オフ、ニューヨークメッツが米国の野球ファンを驚かす決断を下した。チーム低迷の打開策として新たなゼネラルマネージャーを迎えることになったのだが、メッツが招いたのは「現職の代理人」だった。大谷翔平選手のエージェントを務めたネズ・バレロ氏と同じ『CAAスポーツ』に所属するブロディ・バンワゲネン氏である。
ボラス氏が吸血鬼と罵られているように、代理人とGMは「敵対関係」にある。少しでも多くブン取ろうとするのが代理人なら、「1ドルでも安く!」と思うのがGMだ。
「問題なのは、バンワゲネン氏のクライアントがメッツに在籍していることなんです。今年のサイ・ヤング賞候補投手のジェイコブ・デグロームがそうです。デグロームは2年後にFA権を取得します。代理人とGMが同一人物なんてことになったら…」(前出・同)
過去、球団要職に転じた代理人もいなかったわけではない。しかし、バンワゲネン氏も一流のメジャーリーガーを複数抱えたヤリ手である。そのバンワゲネン氏がメッツ球団の選手編成資料、評価表に目を通せば、彼の抱えている他球団選手の移籍交渉にも何かしらの影響が出るとし、同業者であるボラス氏は「秘匿情報が本当に守られるのか?」と、この人事に異議を唱えていた。
「バンワゲネン氏が一時的に代理人業を休止し、クライアントは同じ事務所の誰かが引き継ぐとの見方もされています。ボラス氏と同じ疑念を抱く代理人はほかにもいますよ」(前出・同)
バンワゲネン氏はGM就任会見でデグロームとの今後について聞かれている。しかし、「その質問は予想していなかった」と、はぐらかしていた。
メッツのGM人事に憤るボラス氏の次の出方も注目されている。菊池の交渉に専念できるのか、高額な移籍金をアテにしている西武も、不安に思っているはずだ。(スポーツライター・飯山満)