「満足していない」と回答した人に対し「勤務条件の改善を勤務先に要望したことがあるか」と聞くと、「ある」と答えた人は43%。意外にも多かった。ところが、改善要望をした後に勤務条件が改善されたと答えたのはわずか15%だった。実際に勤務先に改善を要望したことがあるという働く男性に話を聞いた。
「給料が労働条件の割に少なすぎるから『気持ちだけでも上げてくれ』と交渉したが、1円も上がらなかった」(20代・福祉)
「サービス残業について意見をしたら『なら、自主退職すれば?それならサービス残業もしなくてよくなるだろう』と言われた。絵に描いたようなブラック企業ですよね…」(20代・営業)
「ずっと派遣で働いていますが、正社員との待遇があまりにも違うので、改善をそれとなく要求したところ、クビになりかけました」(40代・派遣)
調査結果を裏付けるような、何とも残念な意見が出てきた。同調査では、雇用者が改善を臨むことと、実際に勤務先が改善に向けて取り組んだことの割合を比較した。改善された割合が多かったのは、「残業時間の短縮」「時短労働勤務」「自分に合った勤務時間」など、勤務時間の関係だった。うがった見方をすれば、企業側が人件費を削減したいとも受け取れる。
一方、62%が希望している「給与の増加」をはじめ、「評価・昇給・昇格制度を整える」「正規雇用者と同等の待遇」など、企業が人事制度や待遇面を改善するパターンは低い。個人が求めていることと、企業が改善することには「落差」があるようだ。
「『パートさんたちの待遇をもっと良くしてくれ』と、管理職の立場から、自分よりさらに上の立場の人間に、ほとんど泣き落としの形で要求。結果、パートさんたちの待遇は改善された。自分の待遇は良くならなかったですが…」(40代・管理職)
このように、勤務条件の改善を勤務先に求め実現したという貴重な意見もあった。ただ、パートの人のためにと要求して実現したものの、自身の待遇は良くならなかったというところがなんとも世知辛い。
働いている人で、勤務条件に「完全に満足している」という人のほうが少数派だろう。それは自然なことだとしても、改善要望を出しても改善されないという場合が大半だというのは、社会全体で考えなければならない重要な問題だ。
文/浅利 水奈