さて、今回は2002年の第47回優勝馬ゴッドオブチャンス(父コジーン、美浦・和田正道厩舎)にスポットを当てた。東京新聞杯(8着)、マイラーズC(12着)とステップを踏み、駒を進めてきたが、成績が成績だけに単勝11番人気と忘れられた存在だった。
ところが、あけてビックリ玉手箱。スタート直後にハナに立つと、17頭を従えてまんまと逃げ切ってしまう。着差は1馬身2|2。2着グラスワールドはじめ、後続馬は術中にはまり、影さえ踏めず手も足も出なかった。
担当の井川静馬厩務員は、「状態はすごく良くなっていたので善戦はするだろうと思っていた」と話すが、「まさか勝つとは夢にも思わなかった」とホンネもポロリ。当時を振り返る表情は笑顔に包まれている。
「いま思い出しても、錚々(そうそう)たるメンバーだったね」。あらためてその時の出馬表を見て、なるほどと納得させられた。ビリーヴ(2着)、マグナーテン(3着)、トロットスター(6着)、ゼンノエルシド(8着)。一時代を築いた快速馬がズラッと名を連ねているのだ。ゴッドオブチャンスが重賞を勝ったのは後にも先にも、京王杯SCの1勝だけとなったが、値千金の勝利だったことはいうまでもない。
井川さんに愛馬の印象を聞くと、「入厩した時から走る雰囲気は持っていた。それに、何より人間に従順で優しかった」と三日月のように目を細めた。続けて、「引っ掛かる馬だったから、ケイコでもレースでも乗り手は苦労したと思う」とスタッフの労をねぎらった。
ゴッドオブチャンスは当時4歳。これからの期待がかかったが、脚部不安に見舞われるなどしてその後、先頭でゴール板を駆け抜けることはなかった。
もうひと花咲かせたい。関係者の切なる思いは実を結ばず、06年の東風S(14着)を最後に引退。種牡馬として第二の人生をスタートさせた。
通算成績は34戦5勝(うち重賞、京王杯SC)