粟生が憧れ続けたベルトを巻いた。
昨年10月、王者ラリオスに初挑戦したが判定で惜敗。プロ初黒星を喫した。だが、試合内容が評価され再戦が決定。「次はない」と不退転の決意で臨んだ。
母から「高貴な王者を目指せ」と激励され、粟生が高貴なイメージという紫色のトランクスで臨んだ。「相手のジャブをセオリーでは外側に交わすものなんですけど、あえて内側にかわしていった」。幻惑戦法で序盤から王者を翻ろうした。
さらにワンツーと左ボディーを有効に使い主導権を握うと、終始ペースを握り続けた。これまで対日本人全勝と“日本人キラー”のラリオスから、最終12Rにはダウンも奪った。フルラウンドを戦い抜き、判定3-0で雪辱を果たした。
世界チャンピオンになることは小学生の頃からの夢だった。「(ベルトは)重いですね。めちゃくちゃ格好いい。(元ボクサーの)親父の夢でもあったんで、こみあげるものがありました」。リング上では判定結果が出る前から、勝利を確信して人目もはばからずに号泣した。
悲願の王座戴冠を果たした粟生には、追う側から追われる側へと立場が代わったことで、険しい道が待ち受けている。
帝拳プロモーションの浜田剛史代表は、今後について「会長と相談したうえで、いろんなパターンがあると思う」と話し、「まずはラリオス側がどういう反応をするのか。ラリオスじゃなくても次から次にいる。世界ランカー10位まで(と対戦するとしたら)みんなに対応できるボクサーにならないといけない。やりやすい相手とやっても仕方がない。(選択が可能なら)強い相手を選んでやっていく」
帝拳ジムの本田明彦会長は「(初)防衛戦は指名試合になると思う」と話した。時期は未定だが、同級1位のエリオ・ロハスとの対戦が有力だ。
新王者となった粟生は試練の道が待ち受けるが、逆境を跳ね返して防衛を重ねていくことができるか。