「田中はオフの主役でした。米FA市場は『田中の去就が決まってから、動き出す。他投手の交渉が本格的にスタートするのはそれからだ』と言われていました。田中の契約前に去就が決まった投手もいますが、だいたいその通りになりました」(米国人ライター)
ポスティングシステムの落札金に『20万ドル』という上限が設けられたからだろう。「まずは田中を狙おう」という雰囲気がメジャー各球団に流れていた。しかし、その後の他FA投手の動向を見てみると、マット・ガーザ(31=レンジャーズ)が『4年5000万ドル』でブリュワーズと契約。アービン・サンタナ(32=ロイヤルズ)は交渉中だが、提示されたのは『3年4000万ドル』以下だという(MLB.com参考/2月11日時点)。ウバルド・ヒメネス(30=インディアンズ)は複数年の大型契約を狙っていたが、「単年契約後、来季またFAを狙う」と方向転換したそうだ。
サンタナはメジャー通算105勝、ヒメネスは昨季13勝をマークした“大物”である。彼らが買いたたかされた理由はともかく、キャンプイン直前となった今も具体的な交渉が始まらない投手もいた。韓国球界からFA宣言し、米球界挑戦を狙うユン・ソクミン投手(27=元起亜タイガース)だ。
「韓国のユン」と聞いて、ピンと来た日本の野球ファンも多いのではないだろうか。
08年北京五輪の金メダル獲得に貢献し、第2回、第3回WBC韓国代表にも選ばれた好右腕で、12年シーズンは最多勝、奪三振、最優秀防御率、最優秀勝率の『投手四冠』にも輝いている。在阪球団の渉外担当者もこう続ける。
「13年は味方打線の援護に恵まれず、9勝止まりでしたが、セットアッパー、クローザーでの実績もあります。高速スライダーが武器で、真っ直ぐのスピードも常時140キロ台後半。3、4年前から、メジャーに行くとか行かないとかの情報も出ていたように記憶しています」
その韓国球界を代表する好投手が、まだ去就が決まっていないのだ。
米スポーツ専門チャンネルESPNが制作した13年オフのFA投手ランキングを見ると、1位は田中。ユンは16位だった。メジャー各球団がこのユンの獲得に慎重な理由は不明だが、
「このまま米球界との交渉が遅々として進まないのであれば、日本のプロ野球チームも獲得に動き出す」(NPB関係者)
との声も聞かれた。
「韓国・三星ライオンズから阪神入りした呉昇恒投手(31=オ・スンファン)のように、クローザー部門で圧倒的な成績を残した投手ではありません。『マイナー契約でもいい』とし、米球界入りにこだわるのか、それとも、韓国球界に戻ってから再挑戦するのか、本人の気持ち次第でしょうね。ユンは先発、中継ぎ、クローザーのどのポジションもできるので、『日本球界でもいい。米挑戦はその後に』と方向転換してくれるのであれば、12球団の渉外担当は興味を示すでしょうね。個人的には、日本では先発よりもセットアッパーが向いていると思う」(前出・渉外担当者)
好右腕が駆け込みで日本球界入りする可能性もある。もっとも、彼の代理人は「高額交渉」で知られるスコット・ボラス氏だが…。