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行列の出来る? 「町弁(街の弁護士)ダイアリー」食えない職業(4)

 「自由と正義」という雑誌がある。一般人には目に触れる機会は余りないが、日弁連(日本弁護士連合会)が毎月発行する会員向けの業界誌だ。記事内容は毎月変わるが、変わらないのが、懲戒処分の公告。おそらく、殆どの弁護士がこのコーナーだけは見ていると思う。知っている弁護士の名前があって、「やっぱりな」「またかよ」と妙に納得したり…。驚くのは、以前に比べてその数が多いこと、多いこと。弁護士の数が急増したのだから、仕方が無いとも言えるか。それにしても、若手の弁護士、女性弁護士の名前も散見される。以前は、常習犯的ないわゆる悪徳弁護士が多かったけど、懲戒理由を読むと、最近では、ちょっとしたミスでも懲戒になるから油断も隙もあったものではない。世知辛い世の中になったものだ。

 それと最近気になるのは、若手弁護士に仕事が無く、司法研修所を卒業しても弁護士登録も出来ない若者たちの話。その数も百人単位でいるらしい。僕らみたいなベテランでも以前のような訳にはいかないのだから、若手に仕事が回らないのは当然だろう。昔、といってもロースクール制度が出来た頃だから、数年前の話だけど、某国立大学の有名教授と話をする機会があった。その教授曰く、「弁護士の仕事なんかいくらでもあるんだから、アメリカ並みに増やせばよい」とおっしゃる。僕は、内心、「ええ、何言ってるの。この先生、あまり市井の事はご存知ないなあ」と思っていたが、結局今の有様だ。大体、国民の間に、弁護士に対する潜在的需要はあるかも知れないけど、それと、弁護士の経済活動とは全く次元の違う話。医者みたいに健康保険のような制度が無いのだから、弁護士を利用できる国民層はどうしても限定されてくる。

 しかも、司法書士や税理士といった周辺資格者に弁護士業務はかなり浸食されている(現実、司法書士法人に雇われている弁護士もいるらしい)。弁護士側の姿勢にも問題はあるが、全ての弁護士がそれなりに食べていける程仕事が無いというのが現状で、おそらく今後も大きな変化は無いと思う。弁護士増やして、切磋琢磨して自由競争しろというのが司法改革の理念なら、あの残酷な3回受験制限(三振制度と言うらしい)も止めた方がいい。リスクと費用を負担して資格とっても、食えない職業なら、利に聡い若者からは敬遠され、国民からは軽く見られる職業になることは確実だ。

<プロフィール>
◎平手啓一(ひらてけいいち)
◎千葉県生まれの静岡育ち、中央大法学部卒業
〜ひと言〜
町の弁護士を四半世紀ほどやっております。これまでの経験から見た法律実務の盲点や新聞テレビで報道されない裏事情を僕なりの観点からコメントします。モットーは「嘘やオベンチャラは書かない」事。本音でいきますので宜しく。あとは趣味に係わる事なども随時、書いていこうと思います。

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