「ヤンキースにこだわらずに、他球団に移籍してでもメジャー球団で現役生活を全うして、日本球界には監督として復帰してほしい」。「メジャーではもう限界が見えている。日本球界に復帰すれば、まだまだやれる。ホームランも40本台はもちろんのこと、50本も狙える。王さんの55本超えに挑め」。松井と親しい関係者の間でも意見が真っ二つに分かれている。
共通しているのは、「4年契約の切れるヤンキースとの再契約はむずかしいだろう」ということだけだ。松井本人は再契約を目指して必死に巻き返しを図ろうとしている。しかし、「DHで出ている間は無理だろう。外野を守れるようにならないと、ヤンキースと再契約の話はできないだろう」と、松井の周辺からも悲観的な声が出ている。
ベストのヤンキース残留の選択肢が消えた瞬間から、松井は重大決意を迫られる。ヤンキース入団時の監督であり、最大の理解者ドジャース・トーリ監督、巨人時代からの恩師である巨人・長嶋茂雄終身名誉監督の2人が、去就決断のキーマンとして浮上する。メジャーの他球団でプレーするのが賢明か、日本球界復帰がベターな選択か。松井は日米の恩師の言葉に耳を傾け、最終決断することになるだろう。
だが、松井と親しい球界関係者は「トーリ監督、長嶋さんに相談するのは間違いないだろうが、一番重要なキーパーソンは夫人だろう」と言い切る。「これまで松井は夫人を公の場に一度も出したことがないほど大切にしている。そんな夫人の一言がすべてを決めるのではないか」と見ているのだ。
確かにマスコミから徹底的に隔離する、松井の夫人に対する異様なガードの堅さからしたら、うなずける話だ。プロ野球界では珍しい話ではない。「イチローがポスティングでマリナーズ入りした際にも、本人よりも夫人のメジャー志向の方が強く、イチローは背中を押された格好だった。松坂にもそういう傾向があった」。日本人メジャーリーガー担当記者はこう明かす。
松井の場合はイチロー、松坂と違い、ヤンキース入りしてから結婚しているが、夫人の占めるウエートの重さは変わらないだろう。となると、日本球界復帰へのネックになる可能性がある。夫人を厳重ガードしてマスコミからシャットアウトできるのは、プライバシーを最優先させる米国だからこそとも言える。日本に帰ってくれば、四六時中、写真週刊誌などが張り付き、松井夫人を追いかけるのは必至。
「いや、問題をクリアできるケースがある」というのは、メジャーリーグに精通している日本の球界関係者だ。「ヤンキースがワールドチャンピオンになってパレードをやれば、夫人同伴が決まりのメジャーだから、松井夫人のお披露目の場になる。一度公式デビューしてしまえば、日本球界に復帰しても、カメラマンに追われることはないだろう」と。
「日本球界に復帰するのなら、天然芝の甲子園を本拠地にする阪神へぜひ」と、フロント首脳がいち早くラブコール。「ありがたい話です」と松井から感謝された阪神は、ヤンキースのワールドチャンピオンを祈願する必要があるかもしれない。