中大の沢村を視察した時は「(沢村は)よく練習するいい選手。1位指名候補? それはそうでしょう。堂々たるものですよ」と太鼓判を押して波紋を広げている。スカウトを大挙6人も引き連れていたために、「巨人のドラフト1位は沢村か」と大騒ぎになったのだ。
それも無理はない。巨人と沢村と言えば、伝説の投手・沢村栄治氏(故人)がいる。その年の本格派ナンバーワン投手に贈られる沢村賞は、12球団の投手にとって最高の名誉であり、最近では日本ハム・ダルビッシュ、楽天・岩隈、西武・涌井などが受賞して感激している。そんな中で、巨人に沢村復活となれば、ファンにもアピールするし、マスコミ受けもする。
が、清武代表の中大・沢村絶賛の前段には「今年は(早大の)大石君、斎藤君、もちろん関西にもいい選手が多い。(スカウト会議で)かなり論議になるから、いい投手は見ないと」というくだりがあるのだ。早大・斎藤佑樹、大石達也にも食指を動かし、さらには沢村視察の数日後には、アマ球界ナンバーワン左腕の仏教大・大野雄大を見て手放しでこう称賛している。
「(背番号)18、21を与えられる候補。りりしい顔をしている。人気が出るね。スター性? 誰が見てもあると思います。ドラフト1位で18、21番のエース番号を与えられる選手を探しているが、その候補の1人」。
この清武発言を報道陣から聞かされた大野は、「空いている番号でいいです。(強力打線の)巨人に入れば勝てると思う」とすっかりその気になってしまっている。罪作りというしかないだろう。「ドラフト直前に正式決定する前までは、5、6人の選手に1位候補だということくらいは言う。他球団との駆け引きもあるからね」とあるスカウトが本音を明かすが、現場のスカウトのテクニックと決定権も持っている球団代表は立場が違う。軽はずみな言動の責任は重大だ。
「素人の代表が見て何がわかる。本当に目立つことが好きな勘違い代表だな。週刊誌のコラムに書いたり、育成ドラフトを立ち上げた人物として、テレビドラマの主人公になって喜んだり、ファンに堂々とサインしたりと、どこまで勘違いしているのか」。球界関係者、巨人OBから巨人・清武代表に非難集中しているのは当然だろう。