ゲームセンターが世間から不良のたまり場というイメージを持たれていた1986年、その片隅でひっそりと稼働を開始したゲームがある。Newジャトレより発売された『THE 野球権』である。専用のアップライト筐体に3つのボタンというシンプルな構造で、その名の通り野球拳を楽しむゲーム。1プレイは100円〜200円と高めの店が多かったが、ある理由のためなかなかの稼働を誇っていた。その理由とは簡単に言ってしまえば脱衣、しかも実写の女性が服を脱いでいくゲームだったのである。
ゲーム性はあまりにも単純で、対戦相手の女性が次に出す手を予想し、グー・チョキ・パーのいずれかのボタンを押すだけ。プレイヤーが勝利すれば女の子が服を脱ぎ、負ければプレイヤーのライフが減るといった仕様で、特定数の勝利で賞品が払い出される筐体も多かった。しかし、当然のごとくインチキが搭載されており、2〜3勝目までは楽勝でありながら、あと1枚でおっぱいが露出される4勝目以降は恐ろしいほど難易度が上がり、プレイヤーにコンティニューをねだるのである。同作は常に日陰の存在でありながらインカムは比較的良好だったようで、1996年には『THE 野球拳 スーパー』としてバージョンアップし、パート29まで発売され続けた。
今回紹介するのはそのセガサターン移植版である『THE野球拳スペシャル 今夜は12回戦』。1995年から1996年まで存在したセガサターンのX指定ソフト(18禁ソフト)の第2弾として発売され、一部マニアの間ではかなり有名なゲームになっている。このX指定ソフトは1年4か月の間に23本が発売され、そのほとんどは脱衣麻雀とPCのエロゲーからの移植である。しかし、本作や『バーチャフォトスタジオ』『プレイボーイカラオケ』といった実写の女の子の裸を見ることが目的のゲームも少数ながら存在していた。
PCゲームでは18禁ゲームの規制はかなり緩く、基本的に局部がハッキリと写っていなければ何でもアリである。しかし、家庭用ゲーム機では18禁と言っても様々な規制があり、例えば男女の絡みはNGになっている。そのため、いざHシーンに突入しても男性の体は描かれず、女性が1人で喘いでいたり、誰もいない方向へお尻を突きだしていたりするのである。また、過度な性描写自体が基本的にNGとなっており、そのためPCのエロゲーと比較して家庭用ゲーム機のエロゲーはかなりマイルドになっているのだ。
こういった家庭用ゲーム機の規制を考えると、登場キャラは女性のみで絡みは一切なく、裸を見せるだけという本作は実にピッタリのゲームだったのではなかろうか。何と言っても乳首には一切の規制がはいらないため、本作のゲーム性が壊されることはなかったのだ。
ちなみに本作のゲーム性はアーケード版と全く同じ。というか野球拳という前提がある限り、これ以上ゲーム性を膨らませるのは無理がある。つまり延々とCPU相手にジャンケンをするだけなのだ。しかし、1回ごとに投資が必要なアーケード版と異なり、こちらは1度購入してしまえば遊び放題。思う存分女の子の裸を堪能できると思いきや…本作もまた3勝目以降は難易度が上がり、クリアするにはかなりの忍耐が必要なのであった。また、1度クリアした女の子の映像はいつでも閲覧可能、といったオプションが装備されていないため、もう1度映像が見たくなったら再び1から勝負しなおさなければならないのである。この辺りはもう少しサービスしてくれても良かったのではないだろうか。おかげで筆者は未だに全員を脱がしたことがないのである。(須藤浩章)
DATA
発売日…1995年
メーカー…ソシエッタ代官山
ハード…セガサターン
SOCIETA 1995