オリックスバファローズの福良淳一GMが関西系メディアの取材に応じ、「緊急トレード」を示唆した。去る6月18日の巨人戦で、伏見寅威(29)が左足アキレス腱を断裂する大怪我に見舞われた。オリックスが支配下登録している捕手は全部で5人。伏見を含め、うち3人を一軍戦に登録していた。通常、プロ野球では「捕手3人態勢」で臨む。育成枠に2人の捕手がいるが、福良GMは“人材難”と判断したようだ。
「伏見は代打の切り札的存在でした。その伏見の代わりに一軍に昇格してきたのは、今季37歳になるベテランの山崎勝己。一軍には若月健矢、飯田大祐の2人もいますが、試合中の怪我はもちろん、試合展開によっては捕手にも代打を出さなければならない場面も出ています。代わりの捕手がいなくなるのを理由に、代打を送れず、好機を逃したとなれば…」(在阪記者)
しかし、オリックスは「外部補強」とは異なる動きも見せている。新人内野手の頓宮裕真(22)に捕手の練習をさせていた。頓宮を捕手に“戻す”のなら、福良GMは昨秋からのチーム構想も撤回することになるが…。
学生野球に詳しいファンは分かると思うが、頓宮は東都リーグ(亜細亜大学)で通算14本塁打を放ち、大学日本代表チームでも4番を任された強打者である。オリックスは打撃優先で、内野手にコンバートすることを前提に指名した。正三塁手として育てたいとし、頓宮はキャンプから必死に内野の守備練習を積み重ねてきた。昨今は5年目の西野真弘(28)がスタメン三塁で出場することも多くなったが、「将来の大砲候補」という期待感は変わっていない。頓宮の捕手再コンバートは、一時的な措置だとしても、内野手としての成長を遅らせることになる。
こんな情報も飛び交っていた。
「セ・リーグで、捕手を出せそうなチームに交換トレードを打診中だと聞いています。相手側が欲しいと思っているポジションの選手を放出できるのかどうか、オリックスは確認を急いでいる、と」(ベテラン記者)
いや、この情報は額面通りに捉えられない点もある。たしかに捕手の頭数は足らないかもしれないが、故障離脱した伏見は捕手というよりも、代打の切り札であって、その打力を買われて一塁のスタメンで試合に出ることもある。オリックスの狙っているトレードは、「代打・伏見」の補填ではないだろうか。
「シーズン途中でのトレードなんですが、その選手が試合に出るとか、移籍することで評価が上がるのであればともかく、そうでなければ、応じたくないとする球団も少なくありません。選手会がウルサイから(笑)。シーズン中に転居させることになれば、子どものいる選手は特に大変なので」(プロ野球解説者)
福良GMは監督から現職に異動した。指揮官時代、糸井嘉男(現阪神)のFA流出に直面し、球団は慰留に必死だったが、福良氏は監督として、「本人が望んでいること」とその背中を押してやったという。
「阪神に糸井流出時の貸しを返してもらうんじゃないか?」(前出・ベテラン記者)
同じ関西圏の球団なので、トレード成立でも選手は引っ越す必要もない。だが、阪神は「今季は現有戦力で戦う」と宣言している。
シーズン途中のトレードは成立させるのが難しい。残されたオリックスの一軍捕手だが、若月は課題だった盗塁阻止率も向上し、飯田はソフトバンク甲斐拓也にも並ぶ強肩だ。
頓宮に捕手の練習をさせたのもそうだが、今のオリックスにとって、「慌てない」「何もしない」のが最良の策だと思うのだが…。
(スポーツライター・飯山満)