同番組は、有名人が全国各地の田舎にある食堂を訪れて、偶然居合わせた地元住民と相席するもの。千鳥は、スタジオに立てられた食堂風のセットでロケVTRを観賞する立場だ。気になるシーンがあれば、手元の「ちょっと待てぃ!」ボタンをプッシュして、ツッコミを入れる。2人が助太刀に入ることによって、ロケ慣れしていない著名人と素人がグンとおもしろくなるというわけだ。
攻めているのは、人選だ。所属するよしもとクリエイティブ・エージェンシー所属の芸人はもちろん、亀田興毅(元プロボクサー)、研ナオコ(歌手)、渡部陽一(戦場カメラマン)、かたせ梨乃(女優)ほか、展開が読めない旅人が時おり抜てきされる。のみならず、マスクマンのプロレスラーである獣神サンダー・ライガー、元カリスマAV男優・加藤鷹、おねぇタレントのナジャ・グランディーバ、大物セクシー女優・明日花キララといった禁断の域にも手を伸ばし、ロケスターとしての未知数を探る。ネット番組さながらの攻め方に、千鳥がテレビ局と築いた信頼関係が見て取れる。
時には、神回が生まれる。1月6日オンエア回の“有名人が生まれ故郷に凱旋SP”が、それだ。大先輩の村上ショージが訪れたのは、愛媛県今治市。小・中学校時代の同級生と旧交を温めるほか、実父の墓参りに行く。そこでは、「親父は酒が好きでね」と墓石のてっぺんから日本酒をドボドボかけて、左右に握った日本酒をあわせて「乾杯!」。父を亡くしてから芸人になったルーツなどを、ぼそぼそ話した。
感動シーンの連続に、ノブは「スタッフ変わった?」、「『ファミリーヒストリー』(NHK総合)のスタッフ入った?」と笑いに替えたが、大悟は「……良すぎたなぁ」、「いい!」と目に涙を浮かべた。ノブからげんこつでツッコミを入れられても、大悟は余韻を噛みしめた。ちなみに、大悟が人前で涙を見せ(かけ)るのは、きわめて珍しい。
そんな番組は、関西人しか見られないと落胆することなかれ。在京民放キー局5局が共同で立ち上げた見逃し配信「TVer」で視聴可能だ。昨年、関東のテレビマンの間で同番組が大きな話題になったのは、このTVerがきっかけだった。
規制のハードルがグンと下がるローカル番組。ぶっちゃけ、金脈だ。
(伊藤雅奈子)