今回は「ヘイポー財団法人お豆考古学研究所」を舞台にダウンタウン、方正、ココリコが新人トレジャーハンターとして「絶対に笑ってはいけない」過酷な状況の中、訓練や研修に臨むという内容になっている。昨年の模様を収録した『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで! 絶対に笑ってはいけないアメリカンポリス24時!』のブルーレイ&DVDも発売中だ。
—— 今回13作目の「笑ってはいけない」ですが、方正さんから見た見どころを教えてください。
方正:見どころというか……これに関しては見る人の楽しみは、もう映画みたいなものでしょう。パートがナンボで、内容ももう下地ができていて、その下地の中から今回は何を提供してくれるのか、どういったことをネタに楽しませてくれるのかということやと思いますよ。
とにかく見てください。
—— 新しい回を迎えるたびに、出る側の方も「面白くしなければ」というプレッシャーが大きくなるのでは。
方正:撮影中はプレッシャーはないですよ。例えば、やることが決まっていれば「面白くしなきゃ」ってプレッシャーもあるんですけど、そもそも僕たちも内容を本当に知らなくて(笑)。次、何がある、引き出しに何が入っている、ということも分からないんです。そんな状況なので、プレッシャーも何も、その環境で頭を回すことで精一杯。痛いことがあるのか、恐いことが待っているのかとか……逆に人が引き出しを開けるときはワクワクしたり。その連続でプレッシャーが入ってこない。視聴者と同じ目線でやっている感じなんです。
—— ダウンタウンのバラエティは、出演する芸人さん同士、笑いを競うような雰囲気に自然と誘導していくような感じがあって、芸人さんはいつも大変だなと思って見ています。
方正:確かに「頑張ってね」という感じじゃないですね。「ほれ、やってみ」という感じ。
そういうフリは確かに、ダウンタウン特有のものかもしれないですね。急に客前でシナリオもなく「やって」と言われたらドキドキしますよ。ライブのような感じ。ほかのバラエティを仕切っている人だとそういうフリはしないし、普通は怖いですよね。そういうフリはあえてしない。グダグダになるかもしれないわけですし……。でも、あえてそれをやらせて、その後フォローする引き出しもダウンタウンはいっぱい持っている。やらせるのもダウンタウンやけど、フォローして笑いを取るのもダウンタウン。そこは明らかにほかの人とは一線を画しているんじゃないですか。ダウンタウンならではの醍醐味という感じがしますね。
—— 急にフラれてダメだった場合、後でダメ出しとかそういうことはあるんですか。
方正:裏でダメ出しされたことはないですね。でも、そういう環境、ダウンタウンの下でやることでとにかく鍛えられたことは確かですね。今田耕司、東野幸治、130R、木村祐一……僕はダウンタウンの下で育った芸人の「一期生」みたいなもんですから。ずっと若いときからやってきたメンバーで、みんな鍛えられました。10年くらい経って東野さんに「どう?ほかの現場楽じゃない?」って聞いたら「そうですね」って。「やっぱりダウンタウンさん以外の現場楽ですね」って。「リストバンドを外した感じじゃないですか」って。今はそういう感じじゃなくなっているところもありますけど、昔は特にダウンタウンは「とんがって」いましたからね。その下でやって鍛えられたのは事実です。
—— 瞬発力がどこよりも必要だったということですか。
方正:瞬発力はダウンタウンファミリーじゃなくても必要。芸能界、テレビでは特に。人間力もそう。そこは変わらないです。ただ2人が鬼教官なだけの話で(笑)。
—— この「ガキ使」の5人の中での方正さんの立ち位置はどんな感じだと自己分析しているんですか?
方正:俺の立ち位置は「パイプ(役)」。ダウンタウンとココリコという10歳違うコンビのパイプです。ちょうど年齢も真ん中くらい。僕が行った時は4人が何とかしてくれる。運命のメンバーやと思っていますよ。
—— 最初の頃は山崎さんは飛び道具という感じがしたんですが、最近は方正さんの役割も変わって来たとんではないですか。
方正:最初はまさに飛び道具でしたね(笑)「ガキの使い」というのは松本さんの脳内を具現化した番組なんですけど、その具現化で松本さんができない部分、ヘタレとかヨゴレとか、そこの部分を僕は担っていたんです。それは感じますね。ただ、僕も成長していって、落語に出会って一人でやる芸ができた。今までみたいに依存しなくてもできる「何か」ができた、ってなったら、今までとやり方も変わってきたというのはあるでしょうね。僕自身が人前で一人で笑いを取りたい、と変わってきたというのも大きいです。ほかの番組からリアクション芸のいろんなオファーが来るんですけど、今は断っているんです。「ガキではやっているじゃないですか」と言われることもありますけど、「ガキ」は違うんですって言うんです。
—— ということは、昔と変わらずダウンタウンの現場というのは特別ということですね。
方正:そりゃ特別です。僕は師匠が2人いて、落語の師匠が月亭八方さん。テレビの師匠はダウンタウンです。師匠の言うことは絶対。だからダウンタウンの現場ではリアクション芸でもなんでもやるんです。
—— 「ガキ使」ではココリコのポジションがほかの芸人に入れ替わる可能性があった、というようなことが冗談めかしにニュースになっていましたが、方正さんは自分に関してそれを意識したことはありますか?
方正:全然意識したことはないです。仕事ですから「情」でやってはダメなんです。お互い必要とされる関係でいないとうまくいかない。だからそのあたりは僕はドライでしたよ。そういう話がもし来てもゴチャゴチャ言わないですよ。「ここでしがみついてなんとか芸人として生きていくんや」っていう気持ちはもちろんありましたよ。若い時はそう。でもやるうちに背伸びしてやっていても自分が苦しいだけ。自分にはちゃんと身の丈にあった服があるということが分かってくる。この世界に5年くらいいたら分かるんですよ。それで「チェンジ」と言われて「ちょっと待ってください」ってなっても、次の収録からむちゃくちゃしんどいでしょうからね。切られるんやったら切られて「次に何ができる?」ってやったほうがいい。その方が健全。だから、あんまり意識しなかったです。
—— この人が来たら「自分のポジションを奪われるかも」って思ったライバル的な存在は過去にいたんですか?
方正:適材適所があって、番組を作る時にここのイスはこれ、って番組のスタッフもちゃんと考えて作るわけです。「類似タレントはいらん」って。で、そこでのライバル意識とか嫉妬心というのは確かに生まれますけど、5年、10年とかやると、身の丈にあった服、自分が何ができるかというのも考えるようになるので、そこは割り切ってやらないと。
—— 方正さんが逆に「こいつがいれば」って思った芸人さんはいますか。
方正:千鳥です。ブラックマヨネーズも。誰とチェンジとかそういう話じゃないですよ。ここに後、誰がいたらいいかとか、そういう視点です。人間力の高い人たちはやっぱり面白いんです。千鳥やブラマヨにはそういうものを感じていました。
—— ジミー大西さんはどうですか?方正さんとの絡みは特に相性がいいように感じますが。
方正:僕は常人なんです。普通なんです。ジミーさんは社会生活ギリギリで「アウト」な人やから、そこのすごさがあるんです。ジミーさんと過去に対決コーナーをやっていましたけど、魚屋さんに行って、生の魚を食うというのがあっても僕は「うえっ」って吐くんです。でもジミーさんはサンマのはらわたをそのまま食うような人。「え、嘘やろ」って。僕にはできないすごさなんです。
リアクション芸をずっとやっていましたけど、出川哲朗さん、キャイ〜ンとかいろいろやっている人がいて、その人らに僕、ずっと言っていたんです。「ジミーさんがこっち来たら全部持っていかれますよ」って(笑)。あれは本物ですからって。
でもね、あれ(ジミーさんのノリ)が大好きってなったら、警報が鳴っていると思った方がいいですよ。あれはすごく面白いですけど、あれが面白くなったら「働くおっさん人形」が面白くなったりするんです。あれはそっちの世界、また別の世界の面白さなので普通の笑いを見ると「なんだこれ」ってなったりするんです。それくらいの劇薬なんです。魂を抜かれないように見ないとだめですよ(笑)
—— 最後に年末に「笑ってはいけない」を見るファンにメッセージを。
方正:今回も面白いです。5人も年齢は変化していきましたけど、毎回毎回その年齢の変化が逆に面白さを引き出している感じがします。とにかく見てください。今回も期待してもらっていいですよ。
(取材・文:名鹿祥史)