「残念な兄」と、実弟の千原ジュニアに紹介されつづけて、まさかのブレイク。千原兄弟は今、コントもドラマも、トークも喜劇もできるマルチプレイヤーになった。実業家としての才覚もあるせいじは、現在都内で、従業員が芸人ばかりの居酒屋・ずるずる処 せじけんと、せじけんバーを経営。24日に最終回を迎えるTBS系ドラマ『ATARU』では、関西弁を封印したクールな警部補の役を演じ、役者としての評価も上げた。
せいじが「残念」といわれる所以は、デリカシーがないながらも、裏表のない性格。それはいつしか、「伝説」と称され、トーク番組に欠かせなくなった。その伝説を、誰よりも上手に伝えるのはやはり、ジュニアだ。
小学生のとき。全校集会でカンシャク持ちの生徒が、椅子を振り上げながら、「おまえら、包丁で刺したろか!」と叫んだ。体育館内は騒然としたが、せいじは、「それやったら、椅子いらんやんけ」とツッコみ、爆笑の渦に巻きこんだ。
高校生のとき。8回も停学になったが、そのうちの7回は喫煙とカンニング。残りの1回は、マラソン大会でゴール付近まで知人の車に乗せてもらうという、不正を働いたためだった。
芸人になってからは、言葉も文化も異なる外国でも、伝説を築いた。
番組ロケで、ケニア・タンザニアの先住民、マサイ族を取材したとき。十数人の子どもを前にしたおとなに向かって、「自分の子、どれ?」と質問。「一夫多妻制なので、全員だ」という答えが返ってくると、会って数秒しかたっていない相手と肩を組み、「自分、やるな〜!」と慣れ親しんだ。翌日、せいじが先頭に立ち、そのうしろをマサイ族が列をなして歩いていた。
ベトナム・ホーチミンをロケしたとき。偶然つかまえたバイクタクシーの運転手が、行く先の道を知らなかった。歯切れも悪い。痺れを切らせたせいじは、運転手を後部に座らせて、みずからが運転して、街を走った。
インドネシアをロケしたとき。現地に生息する大蛇を捕獲する撮影だったが、同行した現地の住民は、日本語がペラペラ。芸人を相手に、何度もボケてきた。それにたいしてせいじが、「なんでやねん!」と頭を叩いてツッコむと、大蛇より先に捕獲された。
絵に描いたような破天荒。現代によみがえった、横山やすし(故人)。
ちなみに、昨年は、ずるずる処 せじけんが、月20万円の赤字だったそうだ。
(伊藤由華)