応神天皇がまだ皇太子だった頃のこと。当時は「笥飯宮(けひのみや)」と呼ばれていたこの神社に参拝に訪れた日の夜、太子の夢に笥飯大神が現れて「名前を交換したい」と言った。太子が快諾すると大神は喜び、「礼として贈り物を渡そう。朝になったら浜辺に行ってみると良い」と告げた。果たして、翌朝になると浜辺には多くのイルカが打ち上げられており、太子は「御食(みけ)の魚(な)を与えてくれたのだ」と喜んで大神を「御食津大神(みけつおおかみ)」と讃えたという。
“食べ物”という人間にとって必要不可欠な物にまつわる神様なだけあって、ご利益は実に多彩。五穀豊穣や商売、無病息災など多岐に渡り、近年は健康・長寿や恋愛に関するパワーが得られるパワースポットとしても注目を浴びている。
健康・長寿については境内から湧き出る冷たい清水が昔から『長命水』と呼ばれ、「この水を一口、年の初めに飲めばその年は健康に過ごせる」と言い伝えられている。恋愛については、敦賀湾を挟んで対岸にある常宮神社との神事・例祭にまつわる言い伝えが関係しているためであると考えられている。
また、この神社で一番のパワースポットは大神が降臨したと伝えられている人口の塚“土公(どこう)”だ。最澄と空海が祭壇を築いて祈祷した古跡であるとの言い伝えもあることから、経塚ではないかとの説もあるが、聖地のため禁足地となっている上に、神社と隣接する小学校の敷地内にあるので参拝の際は神社内部の参詣場所から。
これから涼しくなる季節。冬場ともなれば越前ガニを初めとした味覚を味わえる時期になる。北陸の味覚を求めて旅行に来た際は、“ご飯の神様”まで一度立ち寄ってみては如何だろうか。
(黒松三太夫/山口敏太郎事務所)