村上宗隆選手「チームの成績が最下位という結果になってしまったので、自分の中ではもっと何か出来たのではないかという思いと、チームのために、もっと勝つことに貢献が出来たのではないかという思いがあります」
――9月4日に清原和博さんの10代最多本塁打記録(1986年、31号)と、中西太さんの高卒2年目以内の最多打点記録(1953年、86打点)を更新。中西さんの最多本塁打記録(36本塁打)も9月27日時点でタイと、周りから騒がれました。自分ではどんな思いがあった?
村上「周りから色々言われますが、あと1本で中西さんの記録を超すということでは、物凄く打ちたいので、それに向かってしっかり戦っていきたいと思っています」(9月27日現在)
――清原さんや、それこそ中西さんのプレーは見たことがないよね?
村上「はい。見てないです」
――記録のことを言われると、「そうなんだ」と思うのか、それとも、「いやいや、もっと自分は打てる」と思うのかな?
村上「今シーズンが始まる前、自分ではホームランを30本以上打てるとは思っていませんでした。それに打率は低かったですが、ホームランで打率を稼げるとは思ってもいなかったので、自分なりに少しずつ成長が出来ているのだと感じています」
――プロの世界に入ってみて、いつ、「オレはやっていける」と感じたの? それは1年目? それとも今年に入ってかな?
村上「1年目は、ある程度二軍の方で試合に出してもらえたので、それなりの結果(打率2割8分8厘、17本塁打)を残すことが出来ました。木のバットでも飛距離が変わることなくボールを飛ばすことが出来たので、その点に関しては、何とかやれるのではないかと思えました」
――村上くんがどれだけホームランを打てるのか、とはじめは思っていたけど、気付けば10代で30本を超えたのは、これは間違いなく将来の日本を代表するホームランバッター候補だと思えた。自分の中でのホームランに、こだわりはあるのかな?
村上「そうですね。やっぱり、ホームランは打点に直接からめるので、そこが物凄く嬉しいですし、一発で試合の流れを変えられるので、そういった場面で打てるように頑張りたいです。そんな場面でのホームランが、僕の中で一番価値があるのではないかと思っています」
――プロに入った時、ドラフト1位というプレッシャーはあったの?
村上「いいえ。それはなかったです」
――世間では「清宮世代」と呼ばれているけれど、清宮(幸太郎/日本ハム)くんという存在は意識した?
村上「高校の時は物凄く意識しました。ましてや’17年のドラフト1位で高卒の4人がプロ入りしましたから。その中で僕は、全然名前を知られていなかった。プロとして同じスタートラインに立てたことで、一からのスタートだと思ってやりました。高校の時は全然及ばなかった相手であっても、プロに入って、追いつき、追い越せるようにとやってきました」
――世間的には、「村上世代」と言っていいと思うけど…。
村上「それは僕が考えることではないので、周りの意見を聞きたいと思います」
内藤氏は、清宮選手が小学5年生の時から指導という形でバッティングピッチャーを務めていたという縁がある。一方、村上選手の活躍を見て喜びと同時に複雑な気持ちを抱いたという。何より村上選手の「飛距離」と「逆方向にホームランを打てるところ」を絶賛。アウトコースをレフトスタンドにホームランされるピッチャーのショックがよく分かるからだ。
――逆方向へのホームランは素直にバットが出るの?
村上「はい。少し意識しながらですけど」
――それなら三振なんて関係ないよね。
村上「いえ、関係あります。気にしますね」
――今後、どんなバッターになっていきたいと思う?
村上「とにかく誰よりも打ちたいので、プロ野球界で一番打てるようになりたいです。なおかつ、チームが勝ちに直結する場面で打てるバッターになりたいです」
――強いバッターだね。憧れのプレーヤーはいる?
村上「憧れというか、スゴいと思うのは大谷翔平選手(エンゼルス)です。飛距離とヘッドスピードがとにかくスゴいと思います」
――ほう、大谷選手なんだね。ゴジラこと松井秀喜かと思っていた。
村上「僕は19歳なので、記憶にないというのは語弊がありますが、松井選手がプレーをしている場面はあまり見たことがないので…。松井さんがメジャーに入ってワールドシリーズで活躍したところは見ましたが」
★35本塁打で高級時計ゲット
――チーム内では、立派に一本立ち出来ている感はあると思う。そのチームメイトの中でライバルという言い方はおかしいけれど、スゴい存在として山田哲人選手は意識してる?
村上「いいえ。意識してないです」
――山田さんは山田さん、僕は僕という感じかな?
村上「とんでもない。僕はまだ、全然追いつけるレベルではないんです。守備に関しても、走塁、バッティング、打率、今の僕はとても太刀打ちできる選手ではありません」
――山田選手をスゴいスゴいと言うけど、村上くんも充分いいスタートを切れていると思うよ。だから、これからはニックネームが欲しいよな。
村上「ニックネームですか?」
――令和になった今年、村上くんの活躍が来年以降も続いたら、『令和の怪物』と言われるんじゃないかな。
村上「続くように頑張ります(笑)」
――野球を長くやっていく上で、何が必要なことだと思うかな?
村上「身体のケアだったり、柔軟性だったり、筋力だったり。そういうものを1年1年しっかり築き上げていければと思っています」
――まだイケるよね。ホームラン打てるよね?
村上「出ます、出ます」
――来年さらに楽しみだね。
村上「頑張ります」
――これだけの成績を残すと、年俸がグンとアップするよね。何に使うのかな?
村上「うーん…」
――お金は好き?
村上「好きです」
――なるほど(爆笑)。年俸が上がったら何が欲しい?
村上「今ですか? 欲しいものがあまりないんです。親孝行とかはしようと思いますけど」
――両親に何か買ってあげたい?
村上「何か買ってあげたいのですが、いらないと言われるので…」
――親はだいたいそう言うね。だったら貯めておきな。
村上「はい、貯めます」
――確かホームランを35本打ったら、バレンティンが『ウブロ』の高級時計をプレゼントするという話だったけど。
村上「はい。もらいました」
――高いのかな?
村上「値段は聞いてないのですが、とにかく嬉しいです」
――僕も先輩からプレゼントをもらった経験があるけど、本当に嬉しいよね。一つの目標にもなるし。そういえば、車の免許は持ってるの?
村上「いえ、まだです」
――将来、どんな車に乗りたいと思う?
村上「アウディ…ですね」
――アウディか…高いな。ところで、来年は東京オリンピックがあるけど、侍JAPANについてはどういう思いがあるのかな?
村上「選ばれたらもちろん出場したいですし、出られるように活躍したいです」
――高校時代、通算52本のホームランを打ったわけだけど、村上くんがプロに行けると思えたのはいつ頃? オレは中学3年生の時だったけど。
村上「プロに行けるという思いより、行きたいという思いの方が強かったです。正直、なれるという気持ちは全然なくて、ひたすらプロ野球選手になりたいと思い続けていました。野球をやり始めた頃から、ずっとプロ野球選手になることが夢でしたから」
★山田、青木、バレを超える!
――何歳から野球をやり始めたの?
村上「キャッチボール程度ですが、幼稚園の年中さんの頃です。兄(現東海大学投手の友幸さん)と父も野球をやっていましたので、自然と野球をやるようになりました」
――その頃、好きだった球団は?
村上「特になかったです」
――どうです? ヤクルトに入ってみて。
村上「僕の場合、山田さん、青木(宣親)さん、バレンティンと、球団より選手の方を見てしまうので、チームとしてどうという意識はしてなかったです。入ってみて、チームの顔になれるように頑張ろうと思いました」
――野球に導いてもらえたという恩人や起点となる人はいますか?
村上「ずっと野球をやってきた中で、小学校、中学校、高校の監督やコーチなどがしっかり指導して下さったので、その時々の皆さんが、僕がプロ野球選手になるのに必要な人であったと思います」
――『55』はいい背番号だと思うけど、変えたいという願望はあるのかな?
村上「今のところはないです。でも、いずれは背番号『1』に…。今はヤクルトの顔といえば背番号『1』なので。でも、それを、ヤクルトの顔は『55』に出来れば一番いいのですが。とにかく、チームの顔になりたい、それに見合う活躍をしたいと思っています」
――スゴい! それを言えるのは自信と今の成績があるからだよ。先輩の1人としても、野球を長く続けて欲しいという思いです。では、来季のポジションは?
村上「それはチームにお任せで、どこでも構いません」
――来季の目標は?
村上「今シーズン以上の成績を残すことはもちろんですが、チームの優勝に開幕1戦目から貢献出来るように頑張りたいです。まだ、レギュラーを獲得したとも思っていないので、自分の立場を明確にして、その上で優勝に貢献出来たらと。それと、今年も沢山の応援をありがとうございました。来季も是非、球場に見に来て下さい。喜んで頂けるように頑張ります!」
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むらかみ・むねたか=2000年2月2日、熊本県出身。身長188センチ、体重97キロ、右投左打。
九州学院高時代に高校通算52本塁打を放ち、2017年にドラフト1位で東京ヤクルトスワローズに入団。1年目から二軍で好成績をマークすると、今季は開幕スタメンの座を勝ち取り、10代最多本塁打記録や高卒2年目の選手としての最多本塁打記録に並び、最多打点記録を更新した。今、最も注目されるスラッガーの1人。
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ギャオス内藤(内藤尚行)
1968年7月24日、愛知県出身。身長187センチ、体重94キロ。右投右打。
1986年にドラフト3位でヤクルト入団。入団1年目から開幕一軍入りし、先発・中継ぎ・抑えと大車輪の活躍を見せると、吠える姿から「ギャオス」と命名された。1995年に千葉ロッテ、1996年に中日へ移籍し、1997年をもって引退。プロ通算195試合登板、36勝29敗26セーブ。現在は野球解説やタレント、少年野球の指導者として活躍している。
協力◉ヤクルト球団