信頼はまったく揺るがない。「今度は春の女王の意地を見せたい」と池添騎手は気迫に満ちた表情を見せる。最後の冠、秋華賞。世代最強牝馬を証明するため、オークス馬トールポピーは誰にもそれを譲るつもりはない。
前哨戦のローズSはよもやの6着。しかし、あくまで本番のここを見据えた仕上げだっただけに、陣営にショックはあまり感じられない。
「正直、あのころは八分ぐらいの仕上がりだった。それでもこの馬なら何とかなると思ったんだけど、そこまでは甘くなかった」と、鞍上は苦笑いを浮かべつつ振り返った。
スタートで出遅れる誤算もあった。「ゲートで隣の馬がチャカチャカしてなかなか入らず、その影響があった」。最後は懸命に追い上げたが、絶好調時の爆発力は発揮できなかった。
今度はもちろん、その爆発力に磨きをかけてきた。1週前追い切りは栗東の芝コース。ミクロコスモス、ウィローパドックという逸材新馬2頭をじっくり追いかけた。直線に向いてもかなりの差があったが、そこはやはりお姉さんだ。内にもぐって軽く仕掛けられると楽々並びかけた。本番を想定した末脚磨き。「刃」はぎりぎりまで研ぎ澄まされてきた。
「1回使ったことでバネが出てきたし、乗り味も抜群だった。もともと背中の柔らかい馬だけど、さらに良くなっているし、デキに関しては申し分ない」と池添は信頼感をさらに深めたようだ。
そして今度は馬具にも工夫を凝らしている。春に装着していたハミ革を前走では外して臨んだが、今回は改めて着ける予定だという。
「気性面が成長したからハミ革がなくても大丈夫と思ったんだけど、きょろきょろ物見をしてしまった。元に戻せば集中力も違ってくるはず」
反省を踏まえ、本番ではベストの状態までもっていく。GIに勝ち慣れた陣営の足取りに無駄はない。
「京都の二千は難しいコースだけど、この馬自身は未勝利勝ちしているように相性は悪くない。今度は底力を見せたい」。牝馬2冠へ、池添はもう一度、勝利への強い意欲を口にした。