スポーツ庁が今年度の参与8人を発表し、その中の一人に、元巨人・桑田真澄氏(50)も含まれていた。参与とは、国のスポーツ施策について意見を述べる立場。競技OBが選出されるのは珍しいことではない。東京五輪が目前に控えているだけに、今年度、参与に選ばれた競技OB、有識者は責任重大だ。
しかし、参与が競技経験に基づいて意見を述べるのは五輪に関することだけではない。同庁の鈴木大地長官は、夏の甲子園大会でのピッチャーの連投に苦言を呈してきた。連投、投球数の制限をルール化すべきとの意見だ。これに対し、日本高校野球連盟(高野連)は投球数制限などのルール化に慎重だが、桑田氏が新参与に選ばれたことで、議論も一気に加速しそうだ。
「一時期、少年野球、学生野球での暴力的指導やイジメが社会問題となりました。そのとき、『暴力で巧くなった選手はいない』と厳しい口調で改革を訴えたのが桑田氏でした」(スポーツ紙記者)
桑田氏は鈴木長官に近い意見の持ち主だという。政治部の記者によれば、桑田氏が今回の参与に選ばれた背景にやはり「学校部活動の暴力的指導」があったという。
日大アメフト部の事件に端を発し、各スポーツのパワハラ指導が次々に明るみに出た。その改革を急ぎたいとするスポーツ庁は、暴力指導に反対する桑田氏の言動に着目したのだという。桑田氏が野球界の枠を超えて活躍することは古巣・巨人にとっても喜ばしいことだが、こんな声も聞かれた。
「桑田氏は卓越した投球理論の持ち主でもありますが、巨人の監督、コーチのオファーはありませんでした。水面下ではあったのかもしれませんが。桑田氏がプロ野球OBとして何か意見を出せば、巨人にもメディアは意見を求めてくるし、同意見なんだと解釈する行政関係者も出てくるでしょう」(球界関係者)
桑田氏は好人物だが、「ひと言」が足らなくて誤解を招くこともあった。暴力指導の根絶を訴えたときもそうだった。彼の在籍した中学のクラブチーム、高校はそういう指導を行っていたのかと誤解され、その火消しに追われたという。
今後、桑田氏が高校野球における投球数の制限、連投禁止を主張すれば、ルール化に慎重な高野連はどう思うのか…。桑田氏は連投の負担を経験談として語るよりも、なぜ、学生野球組織が慎重なのかを説明し、スポーツ庁との着地点を示すような意見を主張すべきだろう。
“永遠のライバル”清原和博氏が厚労省主催の薬物依存症に関する啓発イベントに登壇した(3月6日)。KKコンビが時期を同じくして、行政・政治に関わった。やっぱり、この2人は数奇な運命で結ばれているようである。
(スポーツライター・飯山満)